DeNAは事業成長のドライバーとしてデザインをとらえ、さまざまな事業をリードする存在としてデザイナーが活躍できる環境をつくってきました。
そんな中、2025年はDeNA Designの組織に大きな変化がありました。これまでの集権的な横断デザイン組織から、各事業部内へデザイナーを所属させつつ、全社横断のつながりは引き続き保持する構造に変更しました。
これは、事業会社であるDeNAにおいて、デザインが発揮する価値をより高めていくための組織変更です。
これまでも横断組織として事業に深く入り込んできましたが、体制変更に伴い各事業部の中でそれを体現できるプレイヤーをより多く育てる必要が生まれました。そこでDeNA DESIGNでは横断施策として「新卒育成・若手育成」に注力してきました。今回はその中でも若手育成領域の取り組みについてまとめます。
DeNAでは新卒のデザイナーが複数名毎年入社しています。これまで新卒育成は入社1年目のデザイナーのみに提供されており、それ以降は配属先の上長による育成が行われていました。
これまで通り、デザインスキルの育成はハイクオリティなクリエイティブを生み出すにあたって欠かせないものです。一方でこれからのデザイナーの役割は「画作り」にとどまらず、戦略策定やリサーチ・プロトタイピング・実装に至るまで、職域を広げることで価値を高めていく必要があると考えています。
そのような背景でDeNA DESIGNの横断施策として、新卒1年目以降もデザイナーがうまく事業にコミットしていける存在に成長していけるような若手育成施策をいくつも用意しています。
入社後の研修として現役のデザイナーからの「メンター制度」「100本ノック」などを用意しており、さらに範囲を広げて若手3年目くらいまでのデザイナーに向けて「Minimum Product Jam(略称:MJam)」という0→1のプロダクト開発機会をプログラムとして設けています。
このような取り組みが必要となったのは、若手のデザイナーが常に入社する状況、事業部所属になったことに加えて、生成AIの進化が見据えられる中でデザイナーはどのスキルを伸ばせば良いか迷う声が多く生まれていたことも影響しています。
若手育成施策の必要性を考えるにあたってここ数年にサービスデザイナーとして入社した若手メンバー全員と1on1をしてみたところ、ほぼ共通して生成AIへの対応が困りごととして挙がってきました。
それを受けて、改めて何を育成すべきなのかを見直すことにしました。従来のデザインプロセスを分解していくと要件整理、課題定義、デザイン作成、プロトタイプ作成といった中間アウトプットの領域では生成AIとの協働で作業スピードを高められることが分かってきました。
逆に生成AIにうまく仕事を任せるための「ディレクション (与件分析・ビジョン策定など)」や、プロダクトの良し悪しをジャッジして、顧客に本当に喜んでもらえるかを判断する「審美眼」については人間が意志をもって目線を引き上げないとクオリティが上がりません。
なので若手育成機会の設計としては「審美眼」と「ディレクション」の力を伸ばすことを重視しています。さらには通常の業務では取り組みづらい範囲にまでチャレンジしていくことで制作実績や自信をつくることまでを意図しています。
事業部での通常業務に加えて若手のデザイナーが成長できる機会をつくるために行っている「MJam」「100本ノック」「メンター制度」の詳細についてまとめます。
MJam (正式名称: Minimum Product Jam) は、若手の有志メンバーが一定期間プログラムとして参加して必要最小限の工数で自分が欲しいプロダクトを0から作ってみる、部活動のようなプログラムです。
普段は体験しづらい0→1のプロダクトづくりによって審美眼・ディレクション力・制作実績や自信を身につけてもらうことを目的としています。
原則としては「最小限のプロダクトを、最小限の工数で。」「とりあえず、自分で納得いくものをつくる」「作ったプロダクトを世の中 (社内含む) に出す」と定めていて、業務の中でも楽しく取り組めるような場づくりを意識しています。
MJamではそれぞれの参加者が自分で考えてきた「これが欲しい!」と思うアイデアをプロダクトとして具体化し、実際にリリースまで持っていくことをゴールとしています。
例えばあるメンバーは「スマホを触る時間を抑制するアプリ」や「日記を短歌にしてくれるアプリ」を制作していて、生成AI活用や実装へのチャレンジなど日ごろの業務とは違うアプローチを実験しています。
参加者は3年目までの若手を対象としていて、プログラムの存在を伝えた上で参加するかどうかを自由に選んでもらえるようにしています。(ただ2025年では若手の約半分のデザイナーが参加してくれていて生成AIスキルへの興味の強さを感じています。)
期間としては、約3ヶ月で企画からデザイン実装・リリースまでのすべてのプロセスを進めるような流れにしています。事業部の業務が忙しい人も多いので業務の過渡期と被らないようにAチームとBチームに分け、2025年度は2回分プログラムを開催しています。
MJamではあくまで業務を優先するため無理なく続けられることを重要視しており、ゴールや原則だけ共有した上で、期間中に自由に各人が欲しいプロダクトを企画・設計・実装していくような内容になっています。サークルや部活のようなイメージに近いです。
とはいえ「何の課題を解決するか」「どう進めればよいか」と悩むタイミングも多いはずなので、初期の走り出しでは週に1回平日の18:00から1時間ほど参加メンバー全員が集まり、それぞれの進捗を見せ合いながらお互いにアイデアを出し合う時間を置いています。
設計のポイントとしては「リリースをゴールにする」ことが一つあります。
やはり世に出して実際にさまざまな方からフィードバックをもらうことが一番学習になるはずなので、ミニマムな状態でも世に出すことにこだわっています。
最初は社内公開でも良いかと思っていましたが、クオリティと自信を身につけるためにもなるべく全員が個人名義でサービスをアプリストアに公開することを目標としています。
また、もう一つのポイントは「オペレーション感を強めない」ことも重視しています。
オペレ―ティブにモノをつくることは普段の業務で嫌というほどできることなので、「好奇心やワクワクを原動力に良いものをつくる力」を鍛えることを意識しています。
そのためあくまで部活のような雰囲気で感想を言い合う雰囲気・形式を維持しています。
言い出しっぺ 兼 グループAの進行役は私が担当しています。(グループBの進行役は同じく若手育成に取り組むトゥクさんに進行をお願いしています。)ここで意識しているのは「先頭で楽しく旗を振ること」です。
実はメンターとして参加するのではなく、私自身このプログラムに参加していて自分が欲しいアプリをつくっています。なるべくみんなより早くCursorでプロトタイプを作成したり、Gitの操作方法を伝えたりと「こんな楽しい表現もできるよ」「こうすればうまくいくよ」と自分の前例を共有することで基準を示したり安心感を醸成することを意識しています。
また、UIのブラッシュアップなど審美眼に関するフィードバックは個人では身につけづらいので僕から積極的に行うようにしています。これは今後は経験豊富なデザイナーに参加してもらえるとより質が高まるところかなとも思っているところです。
入社後の一定期間でトレース100本ノックというプログラムを研修として提供するようにしています。この目的は「審美眼を磨くこと」としています。
これまではデザイナー自身がデザインスキルを持つことが必要でしたが、生成AIの進化によって自分自身が手を動かすかどうかはあくまで手段の一つとなっています。
育成の観点では、どちらかというとデザインスキルは審美眼を磨くための筋トレのような位置付けで扱うようにしています。
なので逆説的に自分自身でたくさんグラフィックをつくっていき、その中で良いグラフィックを見極めることができるようになることを重視しています。
世の中の実際のバナーをメンターがお題として提示し、業務と並行でトレース・分析をアウトプットしてもらいます。そこにメンターがレビューを行い、また次のお題を提示していく流れを繰り返します。
100本ノックのアウトプットに対するレビューは、各新卒デザイナーの担当メンターが行う形になっています。
DeNAのデザイン統括本部では入社してから半年間先輩のデザイナーが一人ひとりのメンターになる制度が運用されており、ここで直接プロセスやアウトプットの良し悪しにフィードバックをもらう中で少しずつ審美眼や基礎的なデザインプロセスの進め方を学んでいきます。
「トレース100本ノック」や「メンター/チューター制度」は新卒1年目の若手が対象です。その後、新卒1年目から3年目までの間ではMJamに参加しながら継続的に成長ができるような仕組みとしています。
これらの育成機会によって「審美眼」や「ディレクション」の力を少しずつ若手メンバーが身につけ始めています。
例えば前述した「日記を書くと短歌になるアプリ」をつくっている若手2年目のデザイナーは、生成AIで日記を短歌に変換するだけでなく、文章に合わせて良い感じのグラフィックも背景に生成してみる実験をしていました。
この中で思い通りのグラフィックを生成するプロンプト調整に試行錯誤していて、最終的にはうまく意図したものがアウトプットできるようになっていて成長を実感してくれています。
実際に参加しているメンバーからも以下のようなコメントをもらっていて、まだまだ試行錯誤中ですが不安を払拭できる機会になってきているのではないかと思います。
今、DeNA DESIGNの成熟の過程でデザイナーが事業部所属になったことでより高度な能力発揮で事業を担っていく必要が生まれています。さらにAIの進化によってデザインに閉じない、事業に資する新しいクリエイター像を模索する必要も出てきています。
だからこそDeNA Designとして「事業成長のドライバーとしてのクリエイティビティとは何か」を明確に示す必要があると考えています。
DeNAでは1年目から他社と比べてもすでにスキルセットが高く意欲のある人が多く入社してくれています。だからこそもう一段階成長し、うまく事業をドライブできる存在になれるように導いていくサポート環境を組織として用意してあげたいと思っています。
若手育成領域の施策に取り組む中で、自分自身も機会の中で成長できている実感があります。このような実践的な若手育成機会によって事業を推進していけるデザイナーがもっと増えていくように、DeNA DESIGNにおける成長プロセスをさらに固めていきたいです。