マネーフォワード VPoC (Vice President of Culture) の金井です。

マネーフォワードに一人目のデザイナーとして入社し、昨年末からVPoCとして、マネーフォワードらしい文化とは何かを考え、組織内に浸透させていく役割を担っています。

現在はPeople Forward本部という人事組織に所属しています。たまに「もうデザインしないの?」と聞かれることもありますが、私自身はデザインする対象がサービスから組織や文化になっただけだと思っています!今回は、なぜデザイナーが組織や文化をデザインするようになっていったのかをまとめてみたいと思います。

組織や文化をデザインするという仕事の始まりは、社長の辻からの「行動指針をまとめたカードをデザインしてほしい」という依頼でした。

上記の創業当初に作った行動指針は形骸化しており、社内で語られる機会はあまりなかったと思います。当時100人を越え始めた組織にあらためて浸透させていくには、粒度やメッセージを整理し直す必要があると感じました。そこで、人事部長と有志のメンバーを募って、「今のマネーフォワード」に合った行動指針の再策定を行うプロジェクトをスタートしました。「行動指針のカード制作」にとどまらず「マネーフォワードが今後も大事にし続けていきたい行動指針とは何なのか」という、会社の根幹の概念をデザインするきっかけになったのがこのプロジェクトだったなと思います。

(行動指針を、ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャーという形にデザインし直した)

当時は「デザイン経営」や「デザインシンキング」が話題になり、日本の企業にもCXOやCDOという役割が誕生し始めていました。その頃デザイン責任者だった自分は「どうしたら見た目だけじゃない広義のデザインを理解してもらえるのか」「どうしたら上流からデザイナーが関われるのか」「デザイン経営って一体何なのか」ということを日々悶々と悩んでいました。

そんなある日ひとりの経営陣から「営業だってマーケだって悩んでる。被害者にならずに自分たちに何ができるのか、証明しないと伝わらないよ。」と言われます。理解してくれないのではなく、できることを伝えられていないだけなんだ!と、目から鱗が落ちるようでした!そこから、デザイナーの職能を活かしてデザイン領域を広げていくにはどうしたらいいのかと考えるようになったと思います。

デザイナーが得意である「本質的な課題を見つける」「ユーザーを理解する」「曖昧な概念を可視化する」こと。このスキルを活かして、もっとできることがあるんじゃないか。そんな気持ちで、サービスのコンセプトや事業のビジョン、そして冒頭の行動指針などを作るときに、デザイナーも関わらせてもらうようになっていきました。

当時は「それよりUI作って」と怒られたりもしていましたが、「概念の可視化にデザイナーが関わる」ということへのこだわりが、現在のマネーフォワード経営陣のデザイン理解の深さに繋がっていったんじゃないかな...?と思っています!

デザイナーは最終形をイメージしてからデザインを始めます。完成図をイメージするために、何のためにやるのか、課題は何なのか、誰に何を伝えるのか、情報を集めて整理していきます。そしてコンセプトに落として、軸をぶらさずデザインを進める。このようなデザイナーの逆算する性質は、理想の組織や文化をつくっていく仕事とも相性が良いと思っています。

理想を描いて逆算するというやり方は、あらゆる場面で活用しています。例えば、社内報を立ち上げるときも、Culture Hero(四半期ごとにカルチャーを体現した人が表彰されCulture Heroと呼ばれます)を集めて、「理想の組織」のワークショップを行いました。理想の組織を描いた上で、現状とのギャップを探り、そのギャップを埋めるためには何が必要なのか。そこを突き詰めていって「社員にマネーフォワードのいちばんのファンになってもらう」ための社内報を立ち上げています。

マネーフォワードのデザイン戦略室も同様に、みんなで「中長期的にデザイン課題を解決し、デザインの可能性をより活かせるような体制をつくりたい」という理想の姿を描くところからスタートしています。

組織や文化をデザインするというと、小難しいイメージになりがちなのですが、やっていることはサービスをデザインしていた時とそこまで変わっていないと思っています。

デザインするときのコンセプトは、そのまま制度策定や研修などのコンセプトワークにも活かされています。「どんな組織にしたいのか」を描き、ユーザーを理解してどんな課題があるのかを探り、そのギャップを埋めるためにやるべきことは何かを考える。そして軸がぶれないように施策全体のコンセプトを決める。これはサービスのステートメントや、プロモーションの施策を考えていたときと近いものがあるなぁと思っています。

デザイナーが日常的に行うユーザーインタビューなどは、深いインサイトを捉えることができます。サービスは”人”を中心に据えて考えることを大事にしていると思いますが、それは組織や文化においてもまったく同じですよね。

またワークショップの設計やファシリテーションも、組織の意見やアイディアを集約したり、目線合わせや相互理解を深めることに有効です。こんなふうに、デザインをする上で身につけたスキルは組織をつくる際にも活きるんだなーと実感しています。

このようにデザイナーが持つスキルや、ヒューマンセンタードな考え方、バックキャスト思考などは、組織づくりの取組とすごくフィットするなと感じています。もし「どうしたら会社の中でデザインの価値を向上していけるのか」と悩んでいる方は、「概念の可視化にデザイナーが関わる」ということからトライしてみるのもおすすめです!

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