SmartHR クリエイティブディレクター・アートディレクター(以下CD/AD)の名和です。グラフィックやブランディングを中心に数社の制作会社を経て、2023年9月にSmartHRに入社しました。入社直後からCD/ADとして携わってきたSmartHRの採用サイトを2024年3月にリニューアル公開しました。
採用サイトという1つの媒体ではありますが、SmartHRの企業としての在り方や、働く環境を適切に伝えていくうえで非常に大きな役割を持ちますし、結果的にSmartHRへの共感や魅力を感じる人を増やし、組織を強くすることに繋がります。
プロジェクトを振り返りながら、CD/ADとして意識していた点や取り組んだことをまとめたいと思います。
SmartHRは事業、組織ともに急成長をしています。2024年2月時点で従業員数は1,000名を突破。採用人数も増加し、2023年は年間で約330名が入社しています。2024年はさらに多くの採用目標を掲げ、新たなチャレンジとして新卒採用もスタートしています。
※ 具体的な組織状況はこちらに詳しくまとめられています。
ますます高まっていく採用目標を達成していくために、SmartHR 採用広報のnanchanを中心としたチームで戦略を立てており、その1つの施策として採用サイトリニューアルの企画が進行していました。
このタイミングで僕がSmartHRに入社し、入社直後からCD/ADとしてこのプロジェクトに携わることになります。
具体的な僕への期待値としては、ウェブサイトという媒体に対する専門性や、ブランディングに関する知見を活かして、プロジェクトがうまく進むためのリードをしてほしいというものでした。
採用を加速させるという位置付けはもちろんですが、視点を変えると「働く場所としてのSmartHR」の魅力を伝えていく大きな機会です。
そのなかで、今まではサービスとしてのイメージが強い一方、働く場所としてのイメージを差別化して伝えることができておらず、well-workingを目指して急成長を追い求めていくSmartHRの実態とのズレが生まれているという課題感がありました。
そこで、この採用サイトリニューアルという大きな機会を通して「働く場所としてのSmartHR」を反映したコーポレートブランドを可視化し、結果として採用面での目的も達成されるという道筋になることが大事だと考えました。
このような視点を踏まえ、採用サイトで伝えたいメッセージやコンテンツ、トンマナをメンバーで議論しながら固めていきました。その中で、私がCD/ADとして意識していた点をまとめてみます。
トンマナなどの方向性を固めていくうえで特に意識していたことは、”BULLと外しの中間地点”を意図的に狙うことです。 つまり、今まで「SmartHRらしい」と定義していた表現とは異なるけれど、それでいて「これもSmartHRらしい」と感じられる絶妙な塩梅を探ることを意識していました。
SmartHRでは「誠実・ポジティブ・わかりやすい・親しみやすい」という基本原則を定めていたり、SmartHRらしさを共通言語化するための取り組みを行うなど、ブランドパーソナリティを大事に育ててきています。
ただ今回は、「働く場所としてのSmartHR」を的確に捉えて表現することが重要であり、コーポレートの文脈に寄った取り組みでした。そこで、今までサービスとしてSmartHRらしいと定義していたイメージからあえてズラす必要があると考えました。
そのため、SmartHRの普遍的なブランドパーソナリティをベースにしつつも、「未完成」「変化に柔軟」など、今のSmartHRを表すキーワードを設定しながらトンマナを固めていきました。
また、このような方向性の整理は、いかにプロジェクトメンバーそれぞれの視点を掛け合わせて良いアウトプットにしていけるかを意識していました。
私が入社直後だったので、SmartHRや採用に関する理解は、他メンバーの方が解像度が高いので、うまくファシリテーションや可視化をしながらチームで議論を進められるように心がけました。
例えば、採用サイトを通して伝えたいメッセージや要素については、採用広報のnanchanを中心にメンバー全員で整理をしていき、その後のディレクションの軸になっています。
また、今回表現したいSmartHRらしさについても、今までSmartHRに携わってきたメンバーの視点を取り入れながら言語化していきました。
採用サイトの制作は、今までSmartHRでも関わることの多かったトルクさんにパートナーとして伴走していただいています。
CD/ADとしては、いかにフラットな関係性で制作していけるかを意識していました。もちろん最終的な意思決定はこちら側で行うべきですが、高い専門性を持つトルクさんに入ってもらう意義を最大化するためにも、単純な受発注の関係性ではなく、共創できる関係性を保つことが重要だと考えていました。そのために、意識していたことをいくつかまとめます。
方向性の共有をしたり、デザイン案を提案してもらう時に、アウトプットを見せるだけではなく、その思考過程も共有し合うようにしていました。
アウトプットとセットで、そこに至る思考過程も共通認識にすることで、どこをチューニングすれば良いかがお互いにクリアになり、同じ方向を見ながら制作に臨みやすくなると考えています。
提案してもらったアウトプットへのレビューをする際にも、なぜそのように感じたかをできる限り言語化してお伝えすることで「こういうイメージで作っていきたい」という輪郭がチーム内で擦り合ってくように心がけていました。
ディレクションをする中で「手を動かし、アウトプットするからこそ気付く視点」を重要視しています。
CD/ADは方向性を指し示すことはできますが、最終的なアウトプットはディテールの積み重ねによって生まれます。また、このディテールを実際に作るのは制作パートナーであるため、彼らが手を動かす中で気づいた視点やアイデアはとても重要です。
例えば、初期のデザイン案において、幾何学模様のグラフィックエレメントがあったのですが、もう少し形に意思と意味を持たせられないかとお伝えしたところ、SmartHRのバリューを表現する展開としてグラフィックエレメントを提案してくださいました。
このバリューを表現したビジュアルは、コーポレートにおけるブランドアセットとして、今回の採用サイトだけでなく、コーポレートサイトや会社紹介資料などにも展開しています。
このような過程を経て採用サイトのリニューアルを公開しました。
公開してからまだ日は浅いですが、流入数や滞在時間、アクション数など、当初想定していたKPIも順調に推移しており、「未知をひらき、答えにする。」というコピーに強く共感し、応募してくださる方もいらっしゃいました。
入社直後からのプロジェクトではありましたが、関わるメンバーの力を最大化することを意識しながら、良い結果を生むためのプロセス、アウトプットができた手応えがあります。
当初から採用サイトを作るという手段の話ではなく、「SmartHRの企業としてのブランドをどう育てていくか」という問いを中心に据え、最適なアプローチとしての採用サイトがどう在るべきかを模索していくステップを辿れたことが良かったと思いますし、アウトカムとアウトプットを接続させる、クリエイティブディレクションにおける重要な役割を果たせたと感じています。
事業も組織も急成長しているSmartHRにおいて、今まで形作ってきたSmartHRらしさを継承しながらも、次のフェーズに向けて再構築すべき点も多々あります。これからも、SmartHRのブランドを育て、より強く、より魅力的なものにしていきたいと思います。