GMOメディアサービスデザイン部では、2018年7月頃からデザイン組織の課題を解決する「ぐるみ」という活動を開始しました。ぐるみは、グループミッションの略称であり愛称です。

デザイナーのリソースの最大20%(現在は10%程度)を使い、約半年ごとにテーマを変えながら、サービスデザイン部として組織づくりに取り組んでいます。

ぐるみには、サービスデザイン部に所属するデザイナー全員が参加し、勉強会・ガイドライン作成・新規ツール導入など、様々な施策が生み出されてきました。

開始から約5年、サービスデザイン部のメンバーによって100以上の施策が生み出された結果、以下のような効果が生まれる取り組みとなっています。

  • デザイナーたちの相互理解や、積極的なコミュニケーションが生まれるように

  • 実務で新しいことへのチャレンジをするデザイナーが増えていった

  • 上記のような行動が積み重なり、周囲からの期待と信頼を得ることができた

  • ぐるみの取り組み内容が採用においてGMOメディアを選んでもらえる理由になった

  • 各デザイナーのモチベーションが上がり、組織エンゲージメントも強まった

  • 外部ツールを利用した調査でのモチベーション指数が社内でトップクラスの組織になった

ぐるみ開始前後での、デザイナーの満足度の変化

今では社内からの期待も厚く、デザイン組織としての競争力を高める一因となった「ぐるみ」ですが、結果に結びつくまで課題も多くありました。

今回は、ぐるみを運営するなかで生じた課題と、乗り越え方、結果として生まれた効果をまとめることで、デザイン組織づくりに取り組む方々に少しでも参考になれば幸いです。

ぐるみは、2018年4月のサービスデザイン部立ち上げとほぼ同時期に開始した施策です。  ※ サービスデザイン部の変遷はこちらに詳しくまとめているので、併せてご覧ください

複数事業を横断する職能別組織としてサービスデザイン部が立ち上がった一方で、当初はさまざまな課題がありました。

  • 個人の成長を促進する仕組みがない

  • 他部署のデザイナーとのナレッジ共有の仕組みがない

  • どんなスキルを伸ばすべきか分からず専門性も伸ばしづらい

  • デザイナーのモチベーション指数は一部全社平均を下回っていた

デザインの専門職が組織化された部として、新たに個人が成長する機会を創出し、結果的に事業成長に還元される流れを実現したい。もしこれが実現できなければ、部としての存在意義を示すことが難しくなってしまう。

このような危機感を持ちながら、ぐるみを開始することにしました。

ぐるみの企画書の一部

今では5年ほど継続している取り組みとなっていますが、開始してから1〜2年ほどはさまざまな壁にぶつかり、消極的な意見も数多く寄せられていました。整理すると、次のような要因があります。

  1. 部としての信頼構築不足

  2. コミット量のコントロール不足

  3. 業績状況による風当たり

ぐるみ開始当初にぶつかった壁

サービスデザイン部が設立して間もなく、実績もまだない状態であり、当時は事業状況悪化によって全社的に余分な施策を切り詰める意識も高まっている時期でした。 このような状況で、デザイナーの成長のために最大20%のリソースを使うとなると、「もっと事業にコミットできないか」「本当に効果はあるのか」といった消極的意見が生まれるのは当然の反応だったと思います....。

ぐるみや、サービスデザイン部に寄せられた消極的意見の例

一方で、部としては組織化された強みを活かし、個人の成長と事業還元のサイクルを生み出すことは必須であり、粘り強く実績をつくり、価値を示すことが重要だという考えもありました。

そこで、寄せられた意見をしっかりと受け取りつつも、継続していくアプローチを模索していきました。

取り組みを継続させるうえで、「なんとか継続し、結果を示すんだ」という胆力ももちろん重要ではあったのですが、組織的な仕組みとしての試行錯誤も数多く取り組んできました。

ここからは、いくつかその例を紹介します。

ぐるみを通して各デザイナーが持つ目標を、全社的な目標設定・評価のシステムに入れ込む形で管理するようにしました。部としての取り組みを、全社的な仕組みに乗せた理由は以下です。

  1. 評価システムに乗せることで、全デザイナーが取り組む責任を明らかにするため

  2. ぐるみにおける目標や活動内容を、周囲に可視化するため

ぐるみでの目標設定の例

ただ、デザイナーをモチベートする意味では効果を発揮しましたが、当初はぐるみの目標を具体的な数値として定めることが難しく定性目標としていたこと、その中でも時間をかければ達成できるものが多かったことから、下記のような状況も生まれていました。

  • ぐるみにモチベーション高く取り組み、S評価のアウトプットが出てくる一方で、事業KPIは未達という状況が見られた

  • 定量目標でのみ評価される他職種との不公平さが目立った

このような状況を受けて、現在は以下のような方針で運用しており、うまく機能するようになってきました。

  • 作業ボリュームの目安値を設定

  • 期待するアウトプットのイメージ共有

  • テーマ設定のアウトラインをデザインマネージャーが作成することで難易度を調整

  • 毎週〜隔週のぐるみ全体定例で、目標進捗を確認

現在の目標管理の指針

また、ぐるみで取り組んだアウトプットや成果は、積極的に社内に発信していきました。その理由は以下の2つです。

  1. コンテンツとして有益・面白いと思ってもらうことで、より理解を得やすくすること

  2. 知見を積極的に共有することで、業務に活かせるようにすること

例えば、社内で利用しているQiitaにぐるみを通して生まれたアウトプットを積極的に公開していきました。

社内Qiitaでの様子

他にも、全社会で「ぐるみ」の概要をデザイナー以外にも伝わるように周知したり、社外ブログに投稿したり、社内のslackで活動をまとめた資料を送付したりしていました。

また、こちらはメンバーの努力による結果ではありますが、デザイナーのモチベーションが高まり、幅広い課題に対して能動的に取り組むようになったことで、全社での表彰の場面でMVPを受賞することが増えていきました。

デザイナーのMVPの受賞実績

これによって、取り組みの意義やデザイナーの活躍が社内により浸透していくようになりました。

ぐるみで取り組む内容は、必要そうであれば何でもOKというわけではなく、一定のテーマをデザインマネージャーが設定しています。また、テーマごとに組まれるチームメンバーのアサインの指針も設けています。このような指針を設ける理由は以下の2つです。

  • 部としてのロードマップに沿って、効果が見込まれる領域での課題解決を促すこと

  • 取り組むメンバーのモチベーションを高く保つこと

例えばぐるみで取り組むテーマは、以下のようなアウトラインを設計したうえで各メンバーに共有し、チームで課題解決に取り組んでもらうようにしています。

  1. 現在のサービスデザイン部における課題感

  2. プロジェクトを通して得たい効果

  3. 期待するアウトプットイメージ

ぐるみでのテーマ選定の指針

またチームメンバーのアサインは、「メンバー同士の相性の良さ」「リーダー経験をして欲しいメンバーか」「普段事業部で関わっていないか」などの指針を基に決定しています。

ぐるみでのアサインの指針

現在も試行錯誤中ではありますが、このような工夫は、現場メンバー目線での楽しさと、結果としての効果の高さを両立するうえで、重要だと感じています。

このような試行錯誤を行いながら5年程ぐるみの活動を継続した結果、冒頭でお伝えした通り以下のような効果が得られました。

  • デザイナーたちの相互理解や、積極的なコミュニケーションが生まれるように

  • 実務で新しいことへのチャレンジをするデザイナーが増えていった

  • 上記のような行動が積み重なり、周囲からの期待と信頼を得ることができた

  • ぐるみの取り組み内容が採用においてGMOメディアを選んでもらえる理由になった

  • 各デザイナーのモチベーションが上がり、組織エンゲージメントも強まった

  • 外部ツールを利用した調査でのモチベーション指数が社内でトップクラスの組織になった

また、ぐるみに取り組むサービスデザイン部のメンバーにもヒアリングしたところ、現場目線でもポジティブな影響が多く生まれているようです。

ぐるみに対するデザイナーの声

課題にぶつかりながらも継続してきたことで、個人の成長、組織力の強化、事業還元などさまざまな効果を発揮している「ぐるみ」ですが、今後よりその効果を高めていくために、2つの方向性で取り組み方を変えていきたいと思っています。

■ 複利が効くテーマ選定

初期は顕在化している課題が溢れているので、動きさえすれば一定の効果が生まれやすいですが、徐々に手がつけやすい課題は減っていきます。

そのため、今後はより重要かつ難易度が高い課題に取り組めるようにしたり、長期的に活きるアウトプットや仕組みに落としていく必要性が高まります。

ぐるみを通した組織課題の解決は既にサイクルとして回っているので、よりチャレンジングな課題に取り組めるようなテーマ選定を行っていくことは、今後取り組みたい方向性の1つです。

■ 影響範囲の拡大

また、サービスデザイン部としての組織づくりに注力してきたことで、全社的な期待と信頼も高まり、他部署での組織づくりにも活かしたいという声をもらうことも増えてきました。

今後は、ぐるみを通して生まれた知見やノウハウを活かしながら、デザイナーやサービスデザイン部に閉じない価値発揮を全社単位で起こしていくことをより強く意識していきたいと考えています。

サービスデザイン部で掲げるミッション「Design Driven Innovation」

これからもGMOメディア サービスデザイン部では、ミッションとして掲げる「Design Driven Innovation」を達成できるように取り組んでいきますので、続報をお待ちください。

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