カオナビは2022年、パーパスの策定に始まるリブランディングを実施。前回の記事ではそのリブランディングをテーマに、プロジェクトをリードしたコミュニケーションデザイン室(以下、CD室)をご紹介しました。
そして今回は、リブランディングプロジェクトの一環でもある、パーパス浸透施策「カオナビタウン プロジェクト」をピックアップ。
プロジェクトの背景、進行プロセスを中心に、カオナビにおけるボトムアップ型のパーパス浸透のあり方をお届けします。
カオナビはパーパスの考え方に基づきロゴをリニューアル。あわせて、コーポレートサイトやサービスサイト、プロダクトなど、あらゆるタッチポイントまでリニューアルするリブランディングを実施しました。 これにより、社内外に対し未来へ向けたカオナビなりの考え方やスタンスを表明できたと言えます。
ただ、パーパスは掲げるだけ、伝えるだけでは意味がありません。パーパスの実現に向けたアクションも行っていくことで、解像度が上がり、説得力も出ます。
そこで、まずは社員自身がパーパスを意識し、カオナビの目指す未来をイメージできるようなアクションが必要と考えました。それが「カオナビタウン プロジェクト」の始まりです。
このプロジェクトは、パーパスが実現した未来を“ひとつの街”として可視化する、パーパス浸透のための象徴的な取り組みです。
CD室がプロジェクトオーナーとして、コンセプト立案からお披露目パーティーまで担当。適宜、社員を巻き込みながら進行していきました。ここからは、プロジェクトの流れを順に説明していきます。
プロジェクトを始動していく上でまず意識したのは、目的を明確にすることでした。
パーパスの考え方を噛み砕き、カオナビの目指す姿を可視化させることは、あくまでパーパス浸透のための手段です。
目的と手段が入れ替わってしまわないように、また、プロジェクトが途中で頓挫しないように、目的をはっきりと設定していました。
その上で、CD室にて開発したコンセプトは「すべての個性がワークする街」。
カオナビは、誰もが個性を活かして働ける未来を思い描いています。そうしたときに、未来の街は個性がワークしやすい仕組みが整い、そこで働く人たちは仕組みをうまく活用しながら自分らしく働いている。
そんな光景をイメージしつつ、コンセプトを固めていきました。
ただ、コンセプトも掲げただけでは意味がありません。そのコンセプトをいかに社員を巻き込みながら具体的に詰めていくかが、このプロジェクトの肝。となると、社員にモチベーション高く参加してもらうには、具体的なアウトプットが見えていることも重要と考えました。 そこで、具現化にあたっては、誰もが馴染みのある存在、かつ、手触りを感じられるものとしてレゴ®ブロックを採用することに。 カオナビ側で考えたものを、プロのレゴビルダーさんに依頼しジオラマ化する。そこまでをコンセプトとセットで考えていました。
コンセプトと最終的なアウトプット手法を携え、有志の社員と実施したワークショップに移っていきます。
その形式を取ったのも理由があります。それは社員参加のボトムアップ型の取り組みにしたいという意識。トップダウンでパーパスを可視化していっても、自己満足で終わりがちで、そこには共感は生まれにくく、社内浸透も見込みにくいと感じていました。 そこで、各部署から有志の社員を募り、数回に渡り、ワークショップを実施することに。テーマは「未来での“はたらく”を考える」。
ワークショップの設計についても、検討を重ねました。私たちも含め、参加者の誰もが街づくりのプロではありません。「未来での“はたらく”って、何でしょうね?」と急に問いかけられてもいいアイデアは出ませんし、無茶振りになってしまいます。
そこで、初回はオリエンテーションとして、プロジェクト概要やコンセプト、カオナビタウンをイメージする際のポイントをお伝えし、各自が検討する期間を設けることに。
各自のアイデア検討期間後、再度ワークショップを開催。まずは3チームに分かれてグループワークからスタートしました。
未来の働き方やカオナビタウンの構成要素などのアイデアを出し合い、そこで出たアイデアをFigma上でタウンマップとして作り込んでいくという段取り。もちろん正解はないため、私たちとしてはいかに各自が自由にアイデアを出し合える雰囲気を作れるか、そこを常に意識していました。
大いに盛り上がったワークショップで生まれた様々なアイデアを、今度は私たちプロジェクトチーム側でまとめていくフェーズに入ります。
これは正直、うれしい悲鳴といいますか、とにかくいいアイデアが多かったので、じっくり時間をかけてまとめていくことにしました(実はいちばん大変だったのはここかもしれません)。
ただ、アイデアをやみくもにまとめていくわけではなく、「“はたらく”に紐づけられるか」は意識したポイントです。おもしろければ何でもOKにすると、カオナビタウンのアイデアとしてはピントがズレてしまいます。
そういった意識から、コンセプトを体現していきつつ、いかにカオナビらしい要素をピックアップしていくかがこのフェーズにおいては重要でした。 ピックアップしたら、一貫性を持って体系的に落とし込んでいく。最も苦労したプロセスではありますが、やるからには徹底的に!と思いながら取り組んでいました。
こうして、都市構想やカオナビタウンでの働き方などがまとまってきたタイミングでイラスト化。コンセプトは体現できているか、都市構想に見合っているかなどを意識しながら一気に描きあげました。
イラストができ上がったら、当初の予定通り、都市構想を実際にレゴ®ブロックでジオラマ化するべく、日本人でただ1人のレゴ®認定プロビルダーである三井淳平氏に依頼することに。
依頼の際には、コンセプトはもちろん、各施設の細部の設定までお伝えし、解像度高く制作いただけるようにしていました。
ジオラマ制作の裏では、その完成に向けたイベントも並行して動いていました。
というのも、ワークショップでは有志の社員に協力してもらっていましたが、その他の社員はまだパーパスを意識する機会が十分ではない状況。そこで、社員を招いたカオナビタウンお披露目パーティーを実施し、カオナビタウンをきっかけに、カオナビが目指す未来をイメージする場にできればと考えました。 また、カオナビでは社員だけでなく、そのご家族も大切なステークホルダーと考えています。このパーティーでもお招きする形を取り、ご家族も含めたフランクなコミュニケーションの場を目指しました。
当日は、カオナビが考える未来の“はたらく”がイメージできる体験設計はもちろん、何より参加者に楽しんでもらえるように各種制作物にまでこだわり抜きました。Tシャツのオンスまでプロジェクトチームで真面目に検討していたのが懐かしいです...笑
カオナビでは、こういった規模感の社内イベントはこれまで実施したことがなかったため、どのくらい参加してもらえるのだろうと不安はありました。ただ、事前準備・告知のおかげか、180名を超える参加者になりホッとしました。 当日は運営スタッフとして参加者の様子を見ていましたが、満足してもらえているのが伝わってきて、長い時間をかけて準備をしてきた甲斐があったな、と感じました。
実際に事後アンケートでも9割以上の満足度が得られ、社内コミュニケーション活性化にも役立てることができました。 参加者の方々がカオナビタウンを真剣に眺める様子を見て、未来で働く姿を意識するキッカケを提供できたと思っています。
リブランディングプロジェクトの一環、パーパス浸透施策としてスタートしたカオナビタウン プロジェクト。コンセプト開発からお披露目パーティーまで、半年以上をかけて進めてきました。 もちろん、ここで終わりでも一定の成果はあげられているとは思います。ただ、それでは一過性の取り組み。ここまでのプロセスや成果を適切な形で社内外に発信していくことこそ、コーポレートブランディングを手掛ける私たちのミッションだと感じていました。 そこで、2つの特設サイトをつくることに。
こちらは、プロジェクトの背景・意義をはじめ、レゴ®ブロックによるジオラマ化の意図、パーティーの様子などを描いた特設サイトです。 パーティーに来れなかった社員だけでなく、社外の方々にもカオナビのパーパスやプロジェクトについての理解が進むような内容に仕上げています。 結果として、カオナビのカルチャーまでよく知れるサイトにもなっているのが特徴的です。
レゴ®ブロックで作り上げたということもあり、オフィスに展示している実物を見なければ雰囲気が伝わらないという面もあります。 そこで、カオナビの未来へ向けた想いをより多くの方々に触れてもらうべく、ジオラマとは別のアプローチを検討した結果、バーチャル上でカオナビタウンを再現することに。手法としては3DCGを選択しました。 目指したのは、自分の興味のあるところを気軽に探索できるような没入感のあるサイト。もちろん、それだけではなく、コンセプトや都市構想、各施設の紹介までじっくりと読み込むこともでき、未来への期待感を抱かせるようにもしています。
思わず触れたくなるような、柔らかな色調と丸みの街や人のデザインが特徴的
この2つのサイトとも、IN FOCUSさんと一緒に作り上げています。お互いのこだわりがぶつかりまくったからこそ、ここまでのクオリティに仕上がったと思っており、感謝しております。
ここまで、カオナビタウン プロジェクトのプロセスを中心にご紹介してきました。このプロジェクトはパーパス浸透を目的としているので、当然その成果も測っています。ありがたいことにパーパスの理解度は8割を超えるなど、一定の成果をあげられました。 ただ、社員の入れ替わりなどもあり、それらの定量結果は高い水準をキープしながらも少し波があるのも事実。パーパス浸透に向けては、定期的な取り組みが必要とも感じています。 今回のプロジェクトのように、未来に向けた投資をしっかりと行えるカオナビの環境で、今後もパーパス浸透も含めたコーポレートブランディングに励んでいきます。