Visionalグループの株式会社Assuredが運営する、セキュリティ評価プラットフォーム「Assured」では、セキュリティの第三者評価機関という新たな市場を創造し、広げていくことにチャレンジしています。
Assuredは初期の事業検証を経て、サービスのさらなる拡充や新たな事業領域の開拓に取り組みはじめるフェーズにあります。これまで築いてきたブランドについても、お客様から一定のご評価をいただく過程で、その在り方の変化について考え続けています。
Assuredは、従来不透明であった「取引先のセキュリティ(安全性)」を可視化するプラットフォームです。これまで各社三者三様に行ってきた評価業務を、あるべき姿へと置き換えていくサービスであるため、単に市場に届けるだけではその価値を認識してもらいづらい性質にあります。
そのため、創業タイミングから、市場から私たちのサービスがどう認識されるべきかを考え、ブランドの検証を進めてきました。
今後の展開を見越したCI/VIの定義から、各施策のクリエイティブによる見せ方の検証、それらを踏まえたブランドガイドラインの作成など、今までに行ってきた検証の流れをまとめてみます。
Assuredは、クラウド活用およびDX推進を支える唯一のセキュリティの信用格付けプラットフォームを提供しています。
具体的には、国内外のSaaS等クラウドサービスのセキュリティ評価情報をデータベースに集約し、安全性を可視化。クラウドサービスを利用する企業・提供する事業者双方の負を解消するために、既存のセキュリティ関連の業務を一新する、全く新しい業務フローを提供しています。
Assuredの概要や、プロダクトデザインプロセスはこちらにまとめているので併せてご覧ください。
Assuredのサービス提供開始から3年間で提供してきたクラウドサービスのセキュリティ評価情報は、私たちがこれから目指す提供価値の一部に過ぎません。
私たちが目指しているのは「セキュリティの第三者評価機関」であり、そもそも今までになかった世界観や業務フローを市場に提案していく事業と言えます。
その中で、市場やお客様から単なる業務効率化ツールやデータベースとしてではなく、第三者的な専門家による信用情報が集まる評価機関として認識されることを目指しています。この「認識のされ方」は、お客様からの評価や単価にも関係してくるため、今後のビジネス成長性にも大きな影響を与えるものです。
そのためには、Assuredがどのような存在であるのかを明確に定義し、それを社内に浸透させることが重要です。そうでなければ、各タッチポイントのコミュニケーションに一貫性が生まれません。
例えば、セールスは統一された売り方や伝え方ができず、マーケティングではクリエイティブにブレが生じ、プロダクト開発の指針も方向性を見失いかねません。
つまり、市場に対してAssuredをどのように認識してもらうかを明確にし、それを社内外で一貫して伝えていくことが、Assuredのブランドづくりにおいて重要なことだと考えています。
このような背景を踏まえ、創業初期からどのようにAssuredのブランドづくりを行ってきたのかをまとめていきます。
Assuredでは、2020年ごろにベータ版サービスの開発を進めていた段階から、ブランドづくりに力を入れてきました。最初に着手したのは、ブランドの根幹となるCI/VIの策定です。Assuredが目指す在り方や思想を基に、VisionalグループのCI/VIを数多く手がけてきたクリエイティブディレクターの遠藤大輔さんと一緒に作り上げていきました。
特にポイントとしていたのは、Assuredの長期的な事業展開を見越したうえでCI/VIを定めることです。
サービス初期では、セキュリティを軸とした信用調査の代行が中心となりますが、将来的には、セキュリティを軸とした信用をベースに、さまざまな取引が生まれるプラットフォームへと進化していく。このようなストーリーを初期から見越して、それに耐えうるCI/VIを定めることを心がけていました。
単なる調査代行やデータベースではなく、Assuredが目指す在り方を言語化していたからこそ、その想いを集約したロゴマークは、長期的に使い続けられるものとなりました。そのうえで、今回のプロジェクトで、トーンや色味をブラッシュアップすることで、今後目指す世界観にさらにフィットするデザインへと進化させました。
CI/VIを定義した後は、各種クリエイティブへの展開を進めながら、表現や訴求を模索してきました。
例えば初代のLPは、ニーズ検証を目的とし、短期的な提供価値であるセキュリティチェックの効率化や第三者評価の有用性を訴求する内容でした。
その後、顧客理解が深まり、プロダクトの機能拡張が進むにつれて、BtoB SaaSのLPのような構成や訴求へと磨きをかけ、間口を広げて見せることで、インバウンドでの問い合わせ増加を狙ってきました。こうした取り組みにより、実際にインバウンドでの問い合わせも着実に増加していきました。
しかし、当時の表現や訴求について、長期的に目指す在り方との乖離を感じるようになっていきました。短期的な指標は改善されていたものの、私たちが目指す「セキュリティの第三者評価機関」としての在り方を適切に伝えられていないのではないかという違和感があったのです。
また、対外的に何を謳うかだけでなく、「そもそも何のために人が集まり事業を行っているのか」「どのような価値を顧客に届け、それをどのような仲間がどのような思想で作っているのか」「各個人がどのような思いで未来を目指しているのか」といった点が、組織の拡大とともに共有しづらくなっていました。
特に、この1年間で人員が急速に増加したことで、組織として立ち返るべき指針を明文化し、共有する必要性が高まっていました。(代表の大森や古くからいるメンバーが口頭で伝えていくにも限界がありました。)
このような背景を踏まえ、Assuredの思想や戦略と一貫したコミュニケーションを実現するために、改めてブランドの指針を整理することにしました。
当初は、マーケティングコミュニケーションとしての見せ方の調整という意味合いが強かったものの、単なるビジュアルの変更にとどまらず、より根本的な部分から見直す必要があるのではないかと考えるようになりました。こうした背景から、今回のプロジェクトは大きく2つの方向へ派生しました。
具体的には、「Assuredを通して実現したい未来をまとめたブランドブック」と、「在りたい姿を表現するためのブランドガイドライン」の2つです。
ブランドブックとは、私たちが目指す未来や、その社会的な背景、そこへ向かうための姿勢や個々人の振る舞い方などをまとめた、主に社員向けに作られた書籍です。今回制作したものは、あくまで第0版として位置づけており、これから必要に応じて更新していくものとなります。
Assuredのブランドブックは、大きく3部構成になっています。
第1部 : 私たちが作っていく、作りたい世界観をまとめたサマリー。Assuredの事業を通してどのような未来を実現したいのか、読者に問いかけます。
第2部 : 第1部でサマライズしたものをより詳しい文章形式で言語化したもの。 第3部 : このような事業を創るうえで、私たちが何を大切にしていきたいかをまとめています。信頼をビジネスの根幹におく企業として、まず我々自身が信頼される存在であることの重要性や、その振る舞いについて全員で考え、確信が持てる仕組みづくりをしていくことがメッセージとして伝えられています。
ブランドブックにまとめた内容が各メンバーに深く浸透し、目指すべき姿と一貫したコミュニケーションやプロダクト開発を実現できるよう、今後も継続的に浸透を図っていきます。なかでも、まずはその取り組みの一環として、入社者研修の一部に、代表の大森がブランドブックを直接手渡しし、想いを伝える場を設けています。
ありたい姿を言語化するとともに、その世界観を意匠としてどのように表現するかについても、デザインガイドラインの形式で定めました。
基本的なタイポグラフィにはNoto Serifを採用し、やや重厚なカラースキームを設定。さらに、イラストレーションも洗練されたものにしたりと、一般的なSaaSとは一線を画す表現を実現しています。
一方で、数ヶ月運用する中で、マーケティングコミュニケーションの観点からトーンがやや暗く感じられたり、クリエイティブのバリエーション展開が難しいといった課題も見えてきています。現在は、コアとなるガイドラインからどの程度逸脱を許容するか、そのレギュレーションの塩梅なども実践を通して調整を重ねています。
このようなプロセスを経て、Assuredが目指す在り方を適切に表現するクリエイティブを生み出せるようになってきました。
社内からの反応も変化し、単に「カッコいい」といった感想にとどまらず、「ちゃんとした機関としての信頼感がある」といった声が寄せられるようになっています。
また、ブランドブックを通して、今まで各人が各人の言葉で理解していた「Assuredが創りたい未来」について社員全員で共通認識を持つことができました。これによって今後の中長期的な事業展開や世界観について一人ひとりが自分ごと化しやすくなったという声もあり、ブランドの浸透を前進させる有効なツールとして機能していると感じています。
代表の大森は、今回のプロジェクトの良かった点をこう振り返っています。
Assuredのように新たな市場を創り、広げていく事業において、ブランディングは極めて重要なものだと捉えています。
事業が目指す方向性に対して「これからの世の中に間違いなく必要な存在である」という共感を得るとともに、ユーザーのニーズ・ペインを捉え、サービスを使いたいと思ってもらう必要があります。つまり、単にサービスを綺麗に見せること以上に、市場に対して自分たちの存在意義を問いかけていくコミュニケーションが求められます。
Assuredでは、創業当初からブランドの検証を着実に進めてきたことで、目指す在り方が洗練され、ブランドブックにまとめたように、明確に言語化することができています。
ただし、今回定めたブランドブック・ガイドラインは、未来像やコンセプトが中心となるため、各種タッチポイントへ反映する中では、マーケティング観点での振り幅のつくり方などまだまだ工夫の余地が残されています。また、今後の事業展開に応じて、想像もしない方向へと進化する可能性もあります。
ここから仮説検証を繰り返しながら、市場に対して新しいブランドの提案を行い、Assuredのブランドを確立させていく挑戦を行います。
現在、このような挑戦を共に行える仲間を探しています。ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひお話ししましょう。