DMMデザイン組織で取り組んでいる、デザイナーの評価とアサインのしくみについてまとめます。

前提として、DMMには、新規・既存含めて約60の事業があり、全社で100人規模のデザイナーが所属しています。全社横串組織では、デザイナーのキャリアと事業の両面での成長を意識して評価・アサインを行うしくみをつくっています。

結論として

  • 事業ごとに必要なスキルを発揮できるように細かくデザイナーのスキルを分解

  • スキル評価・行動評価を組み合わせた等級設計

  • キャリアマップや1on1でキャリア形成を支援

の3つを組み合わせて運用しているのが、現在の体制です。

今回は、このような評価・アサインのしくみを取っている背景や、具体的な内容についてまとめてみます。

DMMでは、新規・既存含めて、約60の事業があります。 DMM各所にいる約100名のデザイナーは、これらの事業に必要に応じて異なるスキルを発揮しながら関わっています。

実は、以前はDMMでは縦割りの形態でデザイナーが事業ごとにアサインされていました。

事業ごとにデザイナーがアサインされる縦割り組織

事業別にデザイナーがアサインされる形式では、以下のような課題が生まれていました。

  1. プロダクトの状況が変化することで、必要なスキルとデザイナーの強みが合わない場合が生まれる

  2. 担当プロダクトがクローズするなどの要因で、デザイナーの目標達成がしづらい

  3. 結果として、マネジメントも、デザイナーも伸びる先がわからなくなっていた

このような状態で、うまく事業に貢献できていないデザイナーがではじめ、デザイナー自身のキャリア形成も組織として十分な支援が難しい状態が増えてきました。

そこで、まずは組織体制から見直しながら、アサインできるポジションを増やすことに取り組みました。

これまでの縦割り組織では、プロジェクトが打ち切られたら、そこでデザイナーのアサインが終わってしまい、目標達成が難しくなってしまっていました。

そこで、現在は、デザイン組織を、事業専属でアサインされる縦割り組織と、事業をまたいだデザイン活動を行う横串組織のハイブリッド型で運用しています。

縦横ハイブリッド型のデザイン組織

DMMのデザイナーは、必要に応じて縦割りの組織にアサインされる場合もあれば、状況次第で別の縦割り組織に異動する、事業をまたぐ横串組織にアサイン変更する、など希望するキャリアとスキル次第で、複数の選択肢を取ることができます。

結果として、デザイナーの強みや目標に合わせてアサインを適宜変えていくことができるようになったため、目標がぶつ切りになることは少なくなり、強みを伸ばすためのアサインができるようになりました。

デザイナーのキャリア形成を意識して、組織体制だけでなく、評価体制も見直しています。

主に行ったのは2つです。

  1. スキル評価・成果評価・行動評価を組み合わせたグレード設計

  2. 伸びる先をコミュニケーションするための「キャリアマップ」

DMMにおける評価レイヤーの図解

役割等級(以下、等級)については、デザイナー以外の職能でも評価制度として組み込まれており、ジュニア、ミドル、シニアで分けていて、初期は個人として目の前のデザイン業務が遂行できるかを評価します。等級が上がるにつれて、事業に対する貢献利益や、多くの関係者を巻き込むことができる力を成果として期待されていきます。

特にミドル以上の層に対しては、実績 ( 事業貢献の金額やインパクト )を打ち立てられるよう、個々に目標設計し運用しており、シニア層に近づくにつれて実績との因果関係が強くなっていくような設計になっています。

ミドル層以上は、事業貢献を成果として評価。各自の目標を個別に設計して運用している。

さらに、ジュニア層に対してのスキル評価制度では、DMMのデザイナーとして開発や運用の業務で求められる、基礎デザイン力がどれだけ身につけられているのかを評価しています。

ジュニア層に向けたスキル評価制度の具体例。UX/UI/グラフィックの項目に分解して、どのようなスキルセットを構築するか俯瞰で考えられるようにする。

インフォメーションアーキテクト / 分析項目の一部。デザイナーは全44項目あり、このほかにも、基礎やグラフィック等もある中で、戦略的にスキルを選び獲得していく。

ミドルやシニア層に求められるスキルセットも合わせて、ジュニア層の延長線上で記載しており、広いデザイナーの業務領域の中でも、専門領域に特化したスペシャリスト型か、幅広く対応できる汎用人材型か、個人の特性に合わせ選択できる仕組みにしています。

また、ジュニア・シニアなど等級に関わらず、実績だけでなくDMM開発組織全体のバリューである「Tech Vision」に即した行動も、評価する上で重視しています。

これを行動評価と呼称しており、スキル・成果の評価(合わせて目標達成評価)と、行動評価の比率を50:50に設定していています。

「Tech Vision」をもとに作成した、デザイナーの行動評価の指針

Agilityの行動評価の例。このように全144項目をバリュー / 等級 / ウェイトのマトリックスで明文化している

このTech Visionをデザイナーならどのように体現すべきかを明文化し、等級ごとに理想とされる行動が取りやすくなるようにしています。合わせて社内事例のドキュメント等もリンクさせ、チャレンジするときの参考例にアクセスするハブとしての機能も持たせてあります。

特に、ジュニア層に対しては、自分だけでキャリアの伸びる先を選べない場合が想定されます。

そのような場合のために、キャリアの方向性をデザイナー自身と上長ですり合わせるための「キャリアマップ」を用意しています。

キャリアの方向性を自身と上長ですり合わせるための「キャリアマップ」

業界に入ってまもない頃からUX(価値創造型)へのキャリアパスの例、ゼネラリストからスペシャリストまで広くルートを想定している。

アサインの調整や、目標調整を行う月1回の1on1のタイミングで、このキャリアマップも引用しながら、どのような方向に伸びていきたいのか、具体的にどんなスキルを付ける必要があるのか?を上長とコミュニケーションするようにしています。

評価制度だけでなく、キャリアマップという伸びる先まで細かく可視化することで、自律的にデザイナーが自分のキャリアを考えることができるようになっています。

アサインの面では、デザイナーそれぞれのスキルを細かく定義、可視化して、強みを活かしたアサインができるように工夫しています。

DMMのデザイナー全員が作成している「デザイナーポートフォリオ」。各人のスキルセットを把握して、タレントマネジメントに活用している。

また、個人のできることや、キャリア、どんなことに取り組みたいかは、月1回以上の1on1が推奨されておりこの場で把握するようにしています。

1on1での目標設計の落とし込み

1on1を行う中で、個々人の成果、スキル、行動に対してもフィードバックを行いつつ、本人の希望も踏まえてアサインにも反映するようにしています。

この制度の一番ユニークな部分は「成長することも評価に組み込む」というところです。

DMMに入ったジュニア層は、安心して自分のスキル成長に投資することができるようになっています。もちろん、そのスキル成長が事業の成長や等級の向上にもつながるように設計されています。

事実、DMMでは、平均で通常よりも短期間である約2年でジュニア層からミドル層へスキルが成長しているというデータが生まれています。

また、キャリア的にも多様な道筋に進むメンバーが増えています。例えば、前述したデザイナーポートフォリオのような全社横串的な取り組みが複数あり、これらに縦割りの事業組織に所属しながら、参加してくれている方もいます。

このように、幅広いキャリアをDMMの中で用意できるようになってきています。

DMMでは、「稼げるデザイナー」というメッセージのもと、デザイナーが事業に貢献することを推奨していますが、それと同時に、所属するデザイナーが、キャリアを形成できることに対しても重きを置いています。

今回まとめた評価制度やアサインのしくみを通して、一番伝えたいのは「転職しなくても、DMMの中だけでキャリアを形成できるように」というメッセージです。

特定の事業に所属するだけでは身に付きづらいものも、約60の事業があるDMMなら、別の役割に異動すれば身に付けることができます。また、何が自分にとって良い成長かわからない時でも、1on1やキャリアマップ、等級や評価を通じて、前に進むことができます。

DMMに所属したすべてのデザイナーが、DMMの中でキャリアを形成していくことができるようになれば、彼らが所属してくれた意味になると思います。デザイン組織に所属する約100名のデザイナーが、今後も成長していけるように組織づくりに取り組んでいきます。

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