DMMの60以上の事業群には、新規構築フェーズもあれば、グロースフェーズもあります。デザイナーは個々人の専門性やキャリア志向に合わせて、様々な活躍をしています。
DMMのデザイン組織では、それらの事業群に幅広く関わっています。その実態に合わせて2024年6月に、UI・UXデザイナーのオープンポジション求人をはじめました。
オープンポジション求人の中では、DMMで特に活躍できるデザイナーの3つの人物像を明示しています。
これらの人物像は、「社内で作られたUI・UX研修」などで推進しているフローをベースに社内事例を踏まえて体系化したものです。
これらの人物像の元となった例として、「DMMオンラインクリニック」でのUI・UX推進とチーム整備の事例をまとめていきます。
「DMMオンラインクリニック」は、2021年12月にサービス提供が開始され、DMM内でも注力する事業の一つです。
コロナ禍のローンチ以降は、順調に事業が拡大し、現在サービスに関連するメンバーは150名以上となり、グロース期に突入しています。
オンライン診療市場は、競合も多い環境です。そこで事業立ち上げ期は、特に機能面で業界の進歩に遅れをとらないためにもリリースまでのスピードを優先した開発サイクルを推進してきました。
しかし、 グロース期への突入をきっかけに、サービス内で一貫したユーザー体験を強化していくためのサービス全体のユーザー体験(以下、UX)の再検討の必要性が高まってきました。
デザイン部からも複数名のデザイナーが立ち上げ期から参画していました。
その後グロース期へ突入していく際に、前述した求められる変化を背景にUXの向上にさらに注力していくために「UI・UXチーム」を立ち上げ、追加人員も含めるとデザイン部から3名のデザイナーが関わることになりました。
事業とUXとで課題が重なる点をあらためてチームで整理するため、サービス全体の調査から始めていきました。
次のようなステップを踏みながらサービス全体の調査から始めていきました。
1. ユーザーの声から課題整理 2. サービス全体の「想定UX」を整理 3. 「想定UX」を数値から検証 4. 重要なフローに絞った体験改善
まずは、蓄積されているユーザーの声からUX関連のデータを抽出し、改善点を整理することに取り組みました。
これまでの事業運営により、すでにデータは潤沢にある一方で、どのようにデータを施策へ利活用していくかは担当者に一任されていたため、まずはそのフローを整備するところから取り組む必要がありました。
具体的には、上記の画像のように、カスタマーサポートに寄せられたユーザーの声から、サービスに関連する情報を抽出し、カスタマージャーニープロセスのどのタッチポイントでの課題かを分類していきました。
そのうえで、各機能を担当する事業部メンバーを巻き込み、一丸となって原因を掘り下げていきました。
次に、サービス全体で想定できるユーザー体験「想定UX」をフロー図に落とし込んで可視化し、まとめていきました。
「DMMオンラインクリニック」では、AGA、 メディカルダイエット・肥満症、 不眠症・睡眠障害などの多種多様な商材を扱っています。サービス全体のユーザー体験を考えるにあたっては、販売戦略に沿った主力商品の選定やコンテンツアプローチが必要です。
そこで今度は、集客をはじめ、初回利用からリピートするまでのユーザー体験フローをプロダクト観点で整理していきました。
具体的には、デザイン部でユーザー体験のフローを整理したうえで、各機能を担当する事業部メンバーが各機能の観点で「想定できる行動」「KPI」を記入しました。
検討中のアプローチも書き出してみて、担当制で起こりがちな情報分散を避け、サービスの全貌をしっかりと捉えるようにフロー図に集約させて目線を合わせようとしています。
前述した「想定UX」は、あくまで運営側が思う想定の行動をまとめたものです。
本当にこの想定が正しいのかどうか、実態を検証していき、UXの課題の精度を高めるために数値による検証を進めていきました。
サービス全体のプロセスのなかで優先度の高いフローの仮説を立て、上記の画像のように、ユーザー行動観点のアクセス解析を行います。
ユーザーのトラフィックボリュームの大半を「想定UX」でしっかりカバーできているかを確認していきます。仮に異常値があれば、改善施策の種として施策担当に共有していきます。
また、このようなUXの課題を見つけるための数値分析を、今後は事業部メンバーが自律的に行えるように「DMMオンラインクリニック」で測定すべき指標リストを作成しました。
計測方法やUX観点からみた時の計測優先度もつけておくことで、どのメンバーでも定量的に調査できるようにハードルを下げています。
サービス全体像がわかるプロセスや「想定UX」を設計したことで、具体的に課題となっている画面の特定や改善が、チーム全体として行いやすくなっています。
ここまでの動きから事業優先度が高いフローに対して、さらにデザイン専門職がエキスパートレビューを実施し、より詳細な課題の抽出を行いました。
さらにデザイン部のマネージャーが、事業部メンバーが継続的に取り組めるように、こまめな1on1でケアしています。
今ではデザイナーと事業部メンバー(ディレクター)がチームが一丸となって詳細な画面単位の改善施策を進めています。例えば、ディレクターが自律的に具体的な施策の設計・検証を行い、デザイナーが抽象度の高い段階からUIで具体的な施策の検討を伴走して進められるように日々、チームが成長しています。
例えば、上の画像のように、具体的な画面の改善もUX全体像を意識しながら、ヒートマップを用いて実際のユーザー行動を踏まえた検証を行えるようになっています。
今後はさらに、事業戦略を念頭に置きながら自律的にプロダクトの改善が進むようになるとうれしいです。
「DMMオンラインクリニック」におけるデザイン部の支援の全貌をまとめてみました。今回の支援内容と、冒頭で述べた人物像の関係性は次のように整理できます。
今回の事例を知っていただいたうえで、あらためて次のオープンポジションの求人をみると、DMMのデザイナーの動き方のイメージがより湧いてくるのではないかと思われます。
ここで大事なのは、事業を推進していくためには、人物像A、B、Cの動きを連動させていくことが重要ということです。
すべてを一人でやらずともデザインチーム内の複数名で役割を分担することで、個々の事業状況にフィットした支援が行えます。
さらには、今回の事例でまとめてご紹介したように、事業部メンバーを巻き込み、一丸となってデザイン思考を取り入れながら普及させる土壌づくりにも取り組んでいくことで、デザイナーに限らずUXを扱える人材がどんどん増えていくことでしょう。
サービスフェーズに合わせて、柔軟に事業成長を推進できるように、デザイン基点でDMM全体の魅力を増幅させていきたいと思います。DMMのデザイン組織全体としても体制を拡大しながら支援をより加速していきます。