2024年7月13日・7月14日の2日間、LaLa arena TOKYO-BAYにて、「DREAMDAZE Ⅱ」を開催しました。

「DREAMDAZE」は、MIXIがプロデュースする“ゲーム世界を全身(からだ)で感じる未体験ライブエンターテインメントショー”です。
https://event-info.monster-strike.com/dreamdaze/2/

DREAMDAZE Ⅱ開催にあたり、MIXIデザイン本部 CGデザイングループでは、一部のステージコンテンツでの会場演出や映像制作を担当しました。

モーショングラフィックスや3DCGを得意とするメンバーが多数所属するCGデザイングループ。
メインスクリーン映像や会場床面のマッピングなど、様々な会場演出・映像制作を担当した。

2024年3月時点で世界累計利用者数が6,200万人を突破したモンスターストライクを冠したビッグイベントであり、オンライン配信の最⼤同時接続数は36万を超えるなど、多くの方に楽しんでいただくことができました。

このようなビッグイベントにおける会場演出・映像制作を、CGデザイングループがどのように行ってきたか、意識していた点などをまとめたいと思います。

DREAMDAZEは、モンスターストライクをはじめとする、“ゲーム世界を全身(からだ)で感じる未体験ライブエンターテインメントショー”です。

昨年に続き今年で2回目となるこのイベントを、2024年5月に開業した千葉県船橋市の大型多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」で開催しました。

2024年7月13日・14日の2日間で、「MONSTER STRIKE ORCHESTRA-resonance world-」「禁忌の誘い ~演舞ノ獄~」などのMIXIがプロデュースするゲームや音楽などのライブエンターテインメントショーをはじめ、「モンスターストライク」の日本一を決める大会「モンストグランプリ2024 ジャパンチャンピオンシップ」の決勝大会をお届けしました。

CGデザイングループでは、主にモンソニ!LIVEの会場中央の床面へのマッピング映像や、会場前方のメインスクリーン映像の制作を担当。

特に、約一万人を収容する巨大な会場における床面へのマッピング映像は、なかなか経験することがないため、私達にとってもチャレンジングな機会となりました。

担当範囲例1 : 会場中央にある、バスケットボールコート大の床面へのマッピング映像
担当範囲例2 : 会場前方にある巨大なメインスクリーンに投影される映像

制作にあたっては、モンソニ!LIVE制作チームを始めとする事業部側の各メンバーと密に連携し、CGデザイングループ全体で15名が携わりました。

2024年3月頃から床面マッピング映像をはじめとした制作プロジェクトが始動し、演出の方向性検討、仮映像の制作、本制作、リハーサルといった流れで進行。本制作期間は約1ヶ月半であり、まさにチーム一丸となって進めたプロジェクトでした。

体制と進行プロセスの全体像

ここからは、CGデザイングループが担当したステージコンテンツの1つである「モンソニ!LIVE」について、詳細にまとめていきます。

「モンソニ!」は、音楽をテーマにしたモンストのスピンオフプロジェクトであり、個性豊かなキャラクターたちが様々なジャンルの音楽グループで活動を展開しています。

DREAMDAZEⅡでは、「モンソニ!」の12グループのアーティストが登場し、計25曲を披露。CGデザイングループは、ライブ中の床面マッピング映像や、NEXT ARTIST紹介のアタック映像など計38本の制作を担当しました。

モンソニ!LIVEの概要と、CGデザイングループが制作した映像について

モンソニ!LIVEにおける映像制作プロジェクト(床面マッピング・メインスクリーン映像等)が立ち上がったのは、2024年の3月頃です。

今回のモンソニ!LIVEでは、前回にはなかった床面へのマッピング映像を制作しました。その理由は以下の通りです。

  • 前回と会場が変わり、まだ知見が少ない中ではあるものの、新アリーナの空間を生かした、より効果的な演出にチャレンジしたいと考えたこと

  • モンソニ!LIVEで初披露となる新曲が2曲あるので、より記憶に残る演出にしたいと考えたこと

モンソニ!LIVEで初披露となった2つの新曲

具体的には、ステージ上でのバンド演奏と合わせて、床面に歌詞やメロディーに沿ったモーションを投影する事で、より印象的な演出にすることが狙いです。

当初は新曲2つ分のマッピング映像制作がスコープとなっていましたが、全曲分をCGデザイングループで担当させてもらえないかと私(八木)から提案しました。その理由は次のようなものでした。

  • せっかくなら全曲分の演出にこだわる事で、より盛り上がるLIVEにしたい

  • CGデザイングループとしてモンソニ!に携わるのが初めてだったので、チャレンジをしたい

  • グループ内でも、モンソニ!やライブ演出・映像制作に興味を持ち、やりたいと手を挙げてくれるメンバーが多くいた

  • 今後モンソニ!のコンテンツ展開を支えるうえで、理解を深める機会にもなる

調整をしていく中で、最終的に全25曲中23曲のマッピング映像に加えて、アーティスト紹介映像など、計38本の映像制作を担当することになりました。

このように、相談された範囲での制作に留まらず、やりたい・やるべきと思ったところに飛び込んで行けることは、インハウスならではのポイントだと思います。

演出の方向性は『演出シート』をベースに検討していきます。 演出シートは、全体のバランス調整や認識の統一を図るために作られており、モンソニ!LIVE制作チームが外部の協力会社の演出チームとのすり合わせに用いたり、CGデザイングループが担当する床面マッピング映像の演出を検討する際のベースにもなっています。

演出シートの例。
アーティストや曲の概要、押し出したい印象 (カラー・形・モチーフなど)、楽曲のパート(イントロや歌詞など) ごとの演出イメージなどが記載されている。

前述の通り、CGデザイングループとしてモンソニ!LIVEの演出に関わることは初めてでした。

そのため、まずは仮映像を制作し、言葉のやりとりだけではなく、ビジュアルで認識をすり合わせてから本制作に入っていくようにしました。

特に、新しいユニットである「さよならグラビティ」は、曲もキャラクターもDREAMDAZEⅡで初めて公開されるため、ユニットの世界観や楽曲のメッセージを最大限に伝えられるようにしたいと考え、仮映像でのすり合わせを入念に行っていきました。

制作した仮映像の例 (さよならグラビティ『Supernova』)
仮映像はモンソニ!LIVEで初披露となった2つの新曲のみに絞って作成した

この仮映像を共有したことで、アリーナの特性上(左方・右方・後方など様々な角度から見られる)歌詞の出し方を一方向にしないことや、プロジェクター映像が照明で見えづらくなることも考慮して、細い線や細かい表現は避け、なるべくコントラストを強めたり、分かりやすいグラフィックにすべきなど、本制作時に気をつけるべき点を洗い出すことができました。

仮映像による方向性の確認をした後は、本制作に入っていきます。

モンソニ!LIVEでの38本分の制作を1ヶ月半のスケジュールで進めていくために、まずはCGデザイングループメンバーを集め、進行プロセスやアサインなどを調整していきました。

特に工夫していた点をいくつかピックアップしてまとめていきます。

■ 進行管理の工夫

  • 森、八木がそれぞれ1日目・2日目のメイン担当となり、進行管理の負担を分散。この2名が事業部・各CGデザイナーとの窓口となり、全体のクオリティ担保も行った。

  • 映像毎の優先度も明確にし、しっかりと力を入れるべきところに力を入れられるようにした

  • 楽曲のパート (ex.Aメロ・Bメロ) によっては、同じ表現を繰り返すことでコストを削減

制作スケジュールや担当を可視化したスプレッドシート

■ ディレクションの工夫

  • 全曲分の簡易な演出指示動画を作成することで、各メンバーが効率的に制作を進められるようにした

  • 同じアーティストの楽曲は、可能な限り同じメンバーに担当してもらうことで、統一感を出すようにした

  • NEXT ARTIST紹介のアタック映像も、そのアーティストの楽曲の演出を担当したメンバーに担当してもらった

各曲の演出指示をPremiere Proのシーケンス上にまとめたものの例
映像制作の効率化と、納品時のヒューマンエラー・書き出しミス防止を目的にAfter Effectsのフォーマットを作成。
各メンバーが、フレームレートやコンポジションサイズが統一された共通のAfter Effectsのプロジェクトデータを使用することで、エラーを避けて制作進行していた。

■ 演出の統一感や制作効率を高めるための工夫

楽曲ごとの演出・映像制作をチームで分担する中で、デザインの統一感の維持や制作効率の向上も重要でした。

例えば、今回のモンソニ!LIVEでは、「モノノケ少女」が「MONSTER」「Villain」「UNBREAKABLE」の3曲を披露しましたが、これら3曲の映像制作は、それぞれ別のCGデザイナーが担当しました。

楽曲ごとの制作担当が異なる中でも、モノノケ少女というアーティストのイメージを統一感を持って演出に反映するため、以下のような工夫を行いました。

  • 過去のライブ映像や楽曲のテイストを基に、モノノケ少女に対するイメージをCGデザイナー3名で出し合った

  • ドットの大きさ・カラー・フォント・モチーフなどの要素について、3名で分担してどのくらいの数値が良いかを決めていった (観点例は以下)

  • ドットの大きさ 

    • ドットの大きさは、会場で見た時にちょうどよい大きさに調整。また、ドット加工にするにあたって、After Effectsで使用するプラグインを統一し、プラグイン内のパラメータ数も同じにした

  • カラー 

    • キャラクターのイメージカラーである3色を共通して使用した

  • フォント 

    • 過去映像で使用されていたフォントに近いものを採用。また、文字をドットに加工した際に読めなくならないようしたり、横・縦の幅が極端に違うものは避けるようにした

  • モチーフ

    • MONSTERは「四角」、Villainは「ハート」、UNBREAKABLEは「三角・矢印」といったように、楽曲ごとのモチーフを設定した

モノノケ少女の楽曲ごとの床面マッピング映像の比較
ドットの大きさや、カラー、フォントなどの要素を共通させることで、統一感を出した
会場での実際の見え方の比較

実際に制作した38本の映像の内、いくつかピックアップしてご紹介します。

■ 床面マッピング映像

モンソニ!LIVE ROCK FESでの制作例

モンソニ!LIVE POP PARTYでの制作例

■ NEXT AERTIST動画

『背徳ピストルズ』の登場時の映像例。
各アーティストのコンセプトに沿って、13本分の映像を制作。

すべての映像制作が完了した後は、会場でのリハーサルを行います。それまではPC・ディスプレイでしか確認できなかった映像を、このタイミングで初めて現地確認することになるため、ドキドキしながらリハーサルを進めていきました。

意図した見え方になっていない箇所はないか、クリティカルな問題はないか、などを確認していきましたが、問題はなく、後は当日を待つのみとなります。

リハーサルの様子。観客席後方から八木と森が見守っています。

このようなプロセスを経て、DREAMDAZE Ⅱの開催に至りました。イベント当日にやるべきことは特にありませんが、1人のユーザーとして体験し、その肌感を確かめたり、改善点を見つけていくことも重要です。

そのため、それぞれが会場の様子を見守り、1人のユーザーとして楽しんだり、次回に向けての改善点を整理したりしていきました。

改めて、DREAMDAZE Ⅱ当日の様子をご紹介します。

DREAMDAZE Ⅱは、冒頭でお伝えした通り、オンライン配信の最⼤同時接続数は36万を超えるなど、大いに盛り上がるイベントとなりました。

参加いただいた方々からは、「モンソニ!LIVE 最高だった」「会場の演出も、盛り上がりもすごかった」「最高の体験ができた」などの嬉しいお声を聞くことができ、盛り上がりの一端を担えたことを嬉しく思っています。参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

また、今回のプロジェクトを通じて私達自身も学びが多く、来年に向けさらにより良くしていきたいと話しています。以下、CGデザイングループ内で行ったKPTの一部をまとめます。

■ Keep ・グループ全体で関わったことで、コンテンツへの愛着が深まり、チーム内の関係性も深まった ・CGデザイングループ全体で一丸となってDREAMDAZEに関わることができた ・ユーザーからも好評で、盛り上げにうまく貢献できて良かった ・アリーナでの映像演出 (モニターの見え方、マッピング範囲、距離感など )の知見を実感を伴って蓄積することができた ・技術面に加えて、連携やフローについても学びが多かった
■ Problem ・床面マッピングの視認性が若干低いと思う場面があった・例えばライティングの強さやレーザーの明るさなどを考え、モニターよりもコントラスト強め、彩度高めをもっと意識したほうが良さそうだった ・事業部側のイメージや意向などを、もっと早い段階で汲み取ることができればよかった ・4Kでの制作だったため、プレビューやレンダリングに時間がかかり、試行錯誤がしづらかった ・スケジュール、進行管理、リソースの見積もりをもう少し正確にできると良かった
■ Try ・イベント / 会場演出にもっと踏み込みたい ・モンソニ!の全ユニットや曲について理解が深まったので、今後の制作にも活かしたい ・メンバーひとりひとりの名前がもっと挙がるようにしたい ・制作前にもう少し事業部と認識を合わせてから制作に入りたい ・AIやUnreal Engineなど、新しい表現にもチャレンジをしたい

CGデザイングループとしても新たな表現や技術などのチャレンジが多かったDREAMDAZEⅡ。

ここで得られた経験や学びは、これから取り組んでいくことになるプロジェクトにも大いに活かせるものです。このようなチャレンジを繰り返し、チームのケイパビリティを広げていくことが、もっと大きな感動や驚きを届けていくために必要不可欠だと考えています。

今回開催したDREAMDAZEⅡの他にも、B.LEAGUEに所属する男子プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」の会場演出にも携わっていきます。今回DREAMDAZE Ⅱを開催したLaLa arena TOKYO-BAYは、千葉ジェッツのホームアリーナとして誕生した施設であり、試合観戦の体験をもっと熱狂的に、楽しくするためにCGデザインを活かしていきたいと考えています。

また、モンソニ!LIVEの演出に携わった経験を活かし、モンソニ!の音楽やキャラクター、世界観をもっと楽しんでいただけるようなコンテンツづくりにも取り組んでいきたいと思っています。

改めて、これほど様々な領域で「やりたい!」と言えば責任を持つことができたり、リアルイベントも含めてユーザーの熱量を直に感じられる環境でものづくりに臨めることは、非常にありがたく、身が引き締まる思いです。これからも、グループ一丸となってチャレンジをしていきたいと思います。

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