2025年、ファインディでエンジニアのための「学びの場」づくりをコンセプトに年間10以上のカンファレンス、300以上のクリエイティブを制作してきました。私はそのカンファレンスのほぼすべてのデザインディレクションを担当しています。
そんな私の目線から、ファインディのカンファレンス設計の裏側を公開します。
私が担当する「Findy Tools」では “エンジニアの技術選定を後押しする“ をミッションに、技術(ツール)とエンジニアをつなぐテックカンファレンスを多数主催しています。
2025年にファインディが開催したカンファレンスは10件。エンジニアのプラットフォームであるファインディが数多くのカンファレンスを開催するのは2つの理由があります。
カンファレンスを通して一貫して意識しているのが「エンジニアのための学びの場をつくる」ということです。
近年、生成AIの進化により、企画・開発・検証のサイクルは大幅に短縮され、エンジニアを取り巻く環境は大きく変化し続けています。
これまでもファインディは、変わりゆくエンジニアリングのトレンドを押さえ、市場全体が成熟していくようにサービスを提供してきました。
カンファレンスでも同じく、これからのエンジニアリング・プロダクト開発環境の変化の前線を学び取り、迷いなく業務を進めていけるようなテーマ設計・体験をつくり続けています。
例えば「AI Engineering」「内製開発」「Data Engineering」「セキュリティ」といった、一概に正解を語りづらい概念に対して、海外や大手企業の事例をもとに最前線の知見に触れる場をつくっています。
ファインディのプロダクトに関する内容に閉じることなく、エンジニアが関心を持つ領域をいち早くキャッチし、多くのエンジニアの学びに繋がる場を提供するのがファインディのカンファレンスの役割だと考えています。
ファインディという事業群としての目線では、プラットフォームとしての価値を強める目的でカンファレンスに投資をしています。
ファインディの理念は「つくる人がもっとかがやけば、世界はきっと豊かになる。」というものです。このために多数のプロダクトを運営しているファインディにおいて、カンファレンスはより多くのエンジニアの方々と出会う「入り口」のような位置付けとなっています。
また、「Findy Tools」は、多くのツールベンダーとも連携して事業を運営しています。カンファレンスという場を通じて、ベンターが提供するツールとそれを求めるエンジニアが出会うきっかけをつくったり、ツールの知られざる側面をエンジニアに伝えることができれば、「Findy Tools」としての価値もより強まっていくだろうという狙いもありました。
年間10以上のカンファレンスの体験をつくってきた中で、エンジニアのための学びの場でありつつ、事業としてプラットフォームの価値を高めていくために、デザインディレクションで工夫していることをご紹介します。
カンファレンステーマ選定は、多くのエンジニアが関心を持っているトピック (次の技術トレンド) に沿って選びます。
ファインディでは、常に複数名のプロジェクトオーナーがいくつかの領域に分かれてエンジニアのトレンドをキャッチアップしています。その中で、「ここはエンジニアの関心が強い」「これからより伸びていきそう」というトレンドを見つけたら、カンファレンスの企画に落とし込みます。
ファインディのプロダクトのPRを目的にすると、学びの場というコンセプトから外れてしまいます。たとえファインディを知らない人でも来たいと思えるように、エンジニアが今1番知りたいトレンド起点でテーマを決めることを意識しています。
企画のテーマが決まったらコンテンツ(セッションや会場企画)を考えます。カンファレンスに参加したエンジニアが学びを得て、業務や今後のキャリアに活かせるように、普段なかなか触れることができない事例や知見を届けられるように意識しています。
例えば、国外の最前線で実践を続ける方を招致したり、業界で話題のツールベンダーをお呼びしてツールの活用例をツールベンダー自身から紹介いただいたりと、エンジニアの関心やペインを解消するコンテンツをつくっていきます。
企画やコンテンツの方向性が決まったら、会場体験や特設ページを同時並行でつくりはじめます。ここでのポイントは、「理解が進む情報の見せ方」をすることです。
例えば、プログラムやシステムの設計思想、構造をテーマにした「アーキテクチャConference 2025」の特設ページでは、カンファレンスで取り扱うトピックを明示するようにしました。
「アーキテクチャ」が指す領域が広すぎるが故にこのカンファレンスで得られることが伝わりづらいのではないかという懸念がありましたが、トピックを明示することで自分が関心のあるテーマに沿ったセッションを見つけやすく、参加に踏み切れるように工夫しています。
他のクリエイティブについても、関心のある情報に最速で辿り着けるように設計しています。
例えば、特設ページのタイムテーブルも興味関心に沿ったものを見つけられるように、どの会場で何が行われているのかを認識しやすいようレイアウトを調整したり。当日設置するフロアマップも、混雑した広い会場内でも参加者が求めているコンテンツに素早く辿り着けるようにわかりやすさを最重視してデザインしています。
エンジニアの学びの機会として企画したコンテンツがしっかり狙ったターゲットに届くように、エンジニアが何に関心を持ってくれるのかを考えながらデザインに落とし込んでいます。
知りたい情報だけでなく、知らなかった情報にも自然と触れる機会を増やせるように意識しています。
例えば、来場者(エンジニア)のペインを解消するツールがあるのに、そのツールにまだ出会えていない可能性があります。カンファレンスを通じてまだ見ぬツールと接点を持てるように、スポンサーブースをスタンプラリーで巡ってもらう体験を導入してみました。
参加者全員が手に取り1日中触るものなので、スタンプラリー台紙のプロトタイプを首に下げてオフィスを歩いてみたりと、当日の参加者の動きを想定しながら体験とデザインを交互に詰めていきました。
他にも、まだ知らないツールに出会う機会を増やすべく、スポンサードいただいたツールの紹介コーナーを特設ページに設けたり、カンファレンス会場にツールの活用事例の展示を置くなど、セッション以外の時間も学びの機会を得られるよう工夫しています。
カンファレンスには、複数の目的の参加者が来訪します。技術や知見を学びにきた方、採用のためにエンジニアと接点を増やしたい方、自社のツールをエンジニアに広めたい方。どんな目的で参加したとしても、学びや出会いの機会を逃さず、楽しんでもらえるように会場の体験設計をしています。
エンジニア目線で自然と「参加したい」と思ってもらえるように、カンファレンステーマに沿ったクリエイティブのトンマナやKV設計は、社内エンジニアを巻き込んで検証するようにしています。
例えば、「Data Engineering Summit」では以下のようなKVを用意しました。これは、AIを起点にデータが自律的に駆動していくようなイメージや、データのアーキテクチャを思わせるようなニュアンスを取り入れてデザインしています。
実はv1時点のKVには、アーキテクチャ的な要素は入れていませんでした。
カンファレンスのPOと話しながら、「もっとデータのアーキテクチャを思わせるニュアンスを入れたい」ということとなりv2の案を調整しています。
このようなクリエイティブは、POだけでなく社内のエンジニアに意見をもらいながらつくるようにしています。ファインディの社内には、カンファレンスの参加者と近い属性のエンジニアが多数いるので、カンファレンスのテーマとギャップがないクリエイティブにしていくためには社内のエンジニアの声がなにより信頼できる意見なのです。
このKV案をエンジニアに見せたところ「データエンジニアにとって馴染みのある “スタースキーマ” という概念も想起できそう」という声があり、v2案を採用することとしました。
「AI Security Conference」では、ハニカム構造や紫の配色を取り入れていますが、これも同じように社内のセキュリティエンジニアに確認して、「ハニカムはイメージしやすい」「紫は、セキュリティの世界でいう “攻め=赤” と “守り=青” の間を取っていて、自然と認識できた」という声をもらい採用しました。
エンジニアにとって自然で見慣れている表現に近づけていくことで、カンファレンスのテーマとデザインのギャップをなくし、ターゲットであるエンジニアにとって「自分のための場だ」と感じてもらいやすくなると考えています。
このような工夫をしながら、ファインディでは2025年には年間10以上のカンファレンスを開催してきました。
1年を通して約21,000名以上の方からの申し込み、100社以上のスポンサードをいただくことができました。
開催数はもとより、それが事業利益にもつながる設計ができたことで、コミュニケーションデザインを起点に事業貢献を進めた先行例をつくることができました。この1年間のカンファレンスのデザインディレクションの取り組みが評価され、2025年末には全社表彰もされています。
さらに、カンファレンスによる価値が高まったことで2026年からは「Findy Tools」の一施策としてではなく、単体で「カンファレンス事業」として扱うことになりました。事業部とデザイナーが一丸となって成果を出し、事業成長の新たな柱を見つけられたことは素晴らしい成果だったと思います。
ファインディのカンファレンス事業は、これまで以上に幅広い領域と多くの学びの場をつくり、多くのエンジニアの方々と出会う入口として「Findy Tools」以外の事業とも連携していきます。
エンジニアにとって「ファインディのカンファレンスに来れば学びが得られる」場になれるように認知を積み上げていきます。
ファインディのデザイナーは、デザインに閉じず、あらゆる場面で “事業成長のために何でもする” というスタンスを取るようにしています。
私も、カンファレンスのデザインディレクションがミッションではありながら、必要ならば企画設計や体験づくり、プロジェクトマネジメントなどあらゆる役割を担うようにしていた1年でした。
結果として、ビジネス理解も進み、自分のスキルや裁量も増え、カンファレンス自体も1つの施策の枠を越え、利益を生む事業として成長することができています。
デザインに軸を置いている人が、事業やビジネスをつくっていけるようになると、事業により大きな価値を生んでいけるはずです。これからはデザインを起点にカンファレンス事業を引っ張る立場として、さらに事業成長を推し進めていきます。
今回の話に関連した登壇を行った「KNOTS 2026」のアーカイブはこちらからご覧ください。
