2024年4月から、DeNA全体のコトづくりのためのサービスデザインの推進を強化することを目的に、旧デザイン本部から「デザイン統括部」へと体制変更を行いました。
デザインだけでなく、市場理解、システム開発、データ、AI、顧客理解を一気通貫で考えられる、ソリューション本部と合流することで、新しいデザイン組織の形で活動していくことになります。
DeNAでデザイン組織が生まれてから約10年。デザインがDeNAの競争力の1つとなることを目指して試行錯誤を重ねてきた中で、なぜこの意思決定をしたのか。その狙いや今後の展望についてまとめたいと思います。
デザイン組織開発に関わるマネジメントの方々や、現場でのデザイン業務と併せて組織づくりに取り組む方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。
旧デザイン本部(〜2024年3月)は、全社横断型の独立したデザイン組織として運営していました。
今回の体制変更により、データ・AI、マーケティング、システム開発、カスタマーサクセスなど、同じく横断組織として存在していた部門が合流し、ソリューション本部として一丸となって事業推進を行う体制となりました。
これによってデザイン統括部では、今までの横断型デザイン組織としての役割に加え、ソリューション本部の各部門との連携を深め、さらなる事業推進の方法を模索し・実践していくことになります。
なぜこのような体制変更を行ったのか、その理由をまとめます。
DeNAのデザイン組織は「デザインをDeNAの競争力の1つにする」ことを目指し、10年以上にわたってデザイン組織としての事業貢献を模索し、実践し続けることで拡大してきました。
従来、ゲーム事業を主力に発展してきたDeNAではエンジニアと営業の影響力が強い一方、デザインはあまり理解されておらず、デザイナーは「編集さん」と呼ばれていました。
このような状況の中から、徐々にデザインの重要性が浸透し、グラフィックからユーザー体験へ、事業へとその範囲を広げていった結果、80名以上が所属する組織へと成長しています。
デザインが事業への相乗効果をもたらした事例も、数多く生まれ続けています。
『横浜DeNAベイスターズ 』の8年ぶりとなるホームユニフォームの刷新、及び広告展開を推進。デザイン主導で推進した結果、販売実績はデザイン発表後1か月間で前年同月比18倍を達成。
京浜急行電鉄株式会社とともに推進する「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」では、ビジョン策定やイベントの企画・運営など、マーケティングやブランディングでも多面的に貢献。
セコム株式会社と取り組む「dot-i」(ドットアイ) では、ニーズと提供価値の深堀り、プロトタイピングなどをデザイナーが中心となって推進。この取り組みにより、2月14日、内閣府が主催する第6回「日本オープンイノベーション大賞」で総務大臣賞を受賞。
今後さらにデザインと事業の相乗効果を生んでいくためには「デザインを、デザイン組織だけに閉じない」ことが重要だと考えています。
DeNAは幅広い領域で事業を展開しており、シード期からレイター期まで、異なる成長段階にある事業がいくつも存在しています。
さらに、デザイン組織だけでなく、データ・AI、マーケティング、システム開発など、異なる専門性を持った横断部門がそれぞれ各事業の成長を支援していました。
その中で、各部門が連携することでより大きな事業価値を生み出したり、新たな領域の検証を進められる事例も増えてきていました。
一方、今まで各横断部門との連携はさほど強くありませんでした。プロジェクト単位での連携はあったものの、事業部の課題に対して各部門が独自にソリューションを提供するケースも多く、各部門が密接に連携することで「 (各部門の強みを踏まえた) 最適なソリューションの提供」ができる余地がありました。
このような背景を踏まえ、市場理解、システム開発、データ・AI、顧客理解を一気通貫で考えられるようにソリューション本部に合流し、新たな事業貢献の方法を模索していくことになりました。
ソリューション本部 デザイン統括部では「DeNA全体のコトづくりのためのサービスデザインの推進」を大きな役割として掲げています。
そのために、特に強化すべき項目として次の2つを設定しています。
- 横断部門としての役割の確立 (各事業のフェーズに合わせた戦略の推進)
- 各事業部に対し、横断部門としての役割の確立と自律的運営に向けての支援強化
- 横断デザイン組織としての継続的な強化
- 優秀なデザイナーが各事業で継続的に高パフォーマンスを発揮し、事業に貢献できる状態
今回のソリューション本部への合流は、あくまでDeNAが展開する各事業の成長をより強く支援していくことが大きな目的です。
ソリューション本部の共通部門として今後やるべきことは、DeNAにおける異なる成長段階にある様々な事業に対し、ソリューション本部一丸となって支援することによって、各事業の自律的な組織運営=レイター期への成長を後押ししていくことです。
さらに、その中でデザイン統括部としてやるべきことは、ソリューション本部の各機能・組織間の連携を強め、本部全体で後押しできるような連携方法を模索・実践していくことです。
シード期、アーリー期、ミドル・グロース期・レイター期などの事業フェーズによって、ぶつかる壁や求められるソリューションも変化していきます。
その中で、最もレバレッジが効く支援の形はどういうものか、ソリューション本部全体で模索・実践していきたいと思います。
また、横断デザイン組織としての役割も引き続き担っていきます。具体的には以下のような項目を強化していこうと考えています。
キャリアパス・事業アサイン・育成・採用
学習と成長促進(新卒育成)・アサイン流動性・デザイナーのキャリアパス設計・評価などを、各事業単体で推進するのではなく、全社横軸や市場動向(フェアバリュー・育成体制など)を加味し、基準を担保する
内部プロセスの最適化
主務兼務を変えることで想定される、様々な課題のシューティング
DeNA DESIGNブランドの維持
採用力強化や、事業貢献の実績を積み重ねる。これにより、優秀なデザイナーがDeNA DESIGNへ集まってくる状態を実現する
全社課題に対するデザイン組織の貢献
IRコミュニケーションや、アライアンス、コーポレート案件などの全社課題への貢献
デザイン組織としての注力や具体的な取り組みについては、2023年11月時点での内容にはなりますが、こちらにもまとめられています。
また、各事業フェーズに合わせた横断デザイン組織としての役割も変化させていきます。
今までは、デザイン本部がいわば「中央集権的」に、各事業への支援や評価、アサインなどを行っていましたが、ミドル・グロース期〜レイター期の事業においては、その事業部内でのデザイン組織構築を支援するような「自律分散型」の組織づくりも進めています。
実際に、レイター期事業に位置する「IRIAM」では、デザイン統括部で培ってきたナレッジを活かし、IRIAM事業部内でデザイン組織を立ち上げていくような事例が生まれています。
このように、自律分散型の組織づくりも進めていくことで、各事業で求められるケイパビリティに沿ったデザイン組織運営がしやすくなります。
一方で、評価やアサインなど横串で基準を担保すべき部分はデザイン統括部が担うといったバランスを取っていくことも重要だと考えています。
ソリューション本部と合流することで、今後はデザインだけではなく、市場理解、システム開発、データ・AIなどの領域との連携がさらに強まっていくことになります。
この体制変更によって、各部門、事業部からは具体的に以下のような期待を寄せられています。
今回の体制変更は完成形ではなく、組織としてあるべき姿を模索していく過程における、現時点での最適解だと考えています。
本来、横断型か事業部付けかどうかであったり、独立しているかといった、デザイン組織の形に正解があるわけではなく、根本的には事業の競争力としてデザインを扱える状態にあるかが重要だと思っています。
このような視点で試行錯誤を重ねてきた結果として今の形になっていますし、今後も組織の形が変わっていく可能性は大いにあります。むしろ、変わっていく方が健全だと思います。
新たな組織の形として「デザイン統括部」となることで、今までにない範囲・アプローチで事業に貢献していける可能性が大きく高まったと思っていますので、今後の活動にもご期待ください。