2024年初旬に、旧コミュニケーションデザイングループ(以下コムデ)から、コムデとマーケティング組織が合流した「ブランディング統括本部」へと組織変更を行いました。
SmartHRにコムデ組織が誕生してから5年。「SmartHRのすべてのタッチポイントにコミュニケーションデザインを。」というスローガンをもとに活動してきた中で、なぜこの意思決定をしたのか。その狙いや今後の展望について、改めてまとめてみたいと思います。
SmartHRでは、2015年のサービスリリースとほぼ同時期からコムデ領域への投資を行ってきました。
サービスの急成長に伴い、コムデ領域の制作需要やその難易度も右肩上がりに高まり、それに応えるように組織も拡大していきました。
その結果、2018年時点で3名だったコムデは、5年間で約20名のメンバー(正社員)を抱える組織へと成長。ブランドマネジメント、サービスデザイン、ディレクションなど幅広い専門性を扱える状態になりました。
スローガンとして「SmartHRのすべてのタッチポイントにコミュニケーションデザインを。」を掲げ、SmartHR社全組織の活動からアウトプットされるタッチポイントすべてにおいて、SmartHRらしくポジティブな顧客体験を形づくることを役割に活動してきました。
その中で、これまでCocodaでも公開してきたように、サービスサイトやコーポレートサイト、デザインシステム、展示会、カンファレンス、サービス紹介パンフ、営業資料などの制作や、ディレクションユニットやブランドマネジメントユニットをはじめとした組織構築など、SmartHRのブランドづくりを支える様々な取り組みを実践してきました。
ちなみに、これまでSmartHRコムデが関与した制作物データをまとめている「デザイン成果物DB」には「1850件以上(2024年12月時点)」のデータが蓄積されており、数多くのプロジェクトに携わってきたことが分かります。
デザイン成果物DBの様子 : https://cocoda.design/sekig/p/p17a118c33116
また、インハウスのコムデ組織があまり一般的ではなかった頃から、私たちなりのアプローチで活動を続けてきた結果、ありがたいことに「SmartHR コムデを参考に組織づくりをしています」という声をいただくことも多くありました。
ただ、これまでの組織拡大は、必要に駆られて対応してきた側面もあります。
急成長する事業に比例して組織全体で取り組むべき課題や施策が増え、それに伴う制作需要も年々高まり、不足分を補う形で組織が拡大してきました。
隣接職種であるマーケティング組織も同様に、5年で5人から98人へと急拡大。ターゲットやチャネルの拡張に伴い、さまざまな施策が次々と立ち上がり、そこにコムデ組織も連携していくような形でした。
これまでは事業成長に呼応して組織拡大することによって一定の成果を上げることはできていました。
しかし、今後の事業成長を見据えると、これまでのように専門性の高い人材を多く迎え入れ、手数を増やしていくというアプローチだけでは、対処することが難しくなってきていました。
例えば、以前公開したSmartHRコムデのディレクションユニットの事例でも触れたように、案件の規模や範囲が拡大し、関係者が増える中で、複雑な課題を柔軟に解決する力が、個々人だけでなく組織全体に求められるようになってきました。
このような状況では、制作需要に対する供給量をいかに増やせるかではなく、事業イシューへのコミットメントをいかに強めていけるかが重要になります。
専門性の高いメンバーが多く集まっているからこそ、改めてその専門性がより事業成果に直結するような体制に組み換え、SmartHRにおけるコミュニケーションデザインをアップデートするタイミングにあるのではないかと考えました。
このような背景や全社的な組織変更の流れもあり、冒頭にも記載した通り、「ブランディング統括本部」への体制変更を実施しました。
具体的には、マーケティングとコミュニケーションデザインの組織を統合することで、さらに職種の垣根を超えて事業成果にコミットしやすくなることを目指しています。
これまでもマーケとコムデは認知率・リードの獲得数・商談数・認知向上・好意醸成など様々な指標を追って活動していました。
しかし、組織が別であることで、企画と制作の距離が生まれやすく、結果として事業成果を追い求めづらい場面もありました。そこで、組織統合によって事業成果への目線を揃え、課題に対して一貫した活動を行える状態にしたいと考えました。
その中で、今までのコムデメンバーは「サービスデザイン部」「ブランドコミュニケーションデザイン部」「コミュニケーションOps部」などの部署に分散して活動を行っています。
例えば、ブランドコミュニケーションデザイン部では、「ブランドコミュニケーション領域の戦略・企画の狙いを体験・アウトプットに反映し、認知・興味・好意醸成を最大化する」ことを役割としています。
ブランドマーケティング、採用、コーポレートなど幅広い領域において、企画段階から情報設計や体制構築、ディレクションを行っていくことによって、戦略とアウトプットの繋がりを強固にしていくように活動しています。
また、サービスデザイン部では、「マーケティングファネルの全般においてデザインやディレクションの力で事業貢献する」ことを役割としています。
リード獲得や商談獲得など、ファネルを横断して課題を探索し、ディレクションやデザインの専門性を活かしてマーケティング活動の成果を最大化するように活動しています。
新たな組織体制での活動を行う中で、特にマーケティング領域における事業課題に対して取り組むべきことが徐々に明確になってきている一方で、まだ試行錯誤を重ねている段階です。どの領域に注力すると最も貢献度が高いのかを探索し、メンバーそれぞれが事業成果に直結する活動をしていけるように、改善を続けていきたいと思っています。
デザインによって事業成果を生み出すためには、主語の再認識が必要だと考えています。
もちろん、メンバー全員が事業をより良くするために日々尽力しています。しかし、時にはデザインやクリエイティブが主語となり、視点が狭まってしまうこともあります。
そのため、「デザインをどう良くするか」ではなく、「事業をどう良くするか(そのためにデザインの専門性をどう活かすか)」という思考の流れを、再認識する必要があると考えています。
深い専門性を身につけるには時間がかかり、難易度も高いため、専門性に対するリスペクトはあって然るべきです。また、その専門性が課題に対して存分に発揮された時のインパクトは大きなものとなります。
しかし、事業会社においては、主語がデザインに偏ることで、「どの指標を伸ばすのか」といった事業文脈での成果が曖昧になる場合があります。
そのため、改めて主語を再認識し、デザインが事業成長に対して機能している状態を組織としてどう実現するかを考えてきました。
国内でも類を見ないほど急速な事業成長を、専門性の拡張によって支えてきたコムデ組織として、改めて専門性と事業成果がまっすぐ繋がる道筋をつくることを目指して実施したのが、今回の体制変更です。
とはいえ、まだまだ試行錯誤の真っ最中です。今後も変化が起きることは当然あります。このような変化を楽しみながら、より良い結果を生み出していけるように、引き続き取り組んでいきたいと思います。