AI不動産投資「RENOSY」では、2025年より、お客様とより長期的な関係を築くためのリブランディングに着手してきました。
サービスのMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)の策定といったサービスの在り方の見直し。そして、ブランドカラーやタグラインの刷新。デザインだけでなく事業戦略や広告戦略も複雑に絡みあったリブランディング施策となりました。
2026年の1月には大規模な認知施策の実施も予定されていた中、このリブランディングプロジェクトは、半年という短期間で、CCO(Chief Creative Officer)の篠原誠、デザイン部部長、マーケティング部のマネージャー、私たち2名のデザイナーという少数体制を中心に、完全内製で進められました。
「ユーザーとの接点はすべてリニューアルする」という方針のもと、OOHの掲出や、約1500ページにわたるサービスサイトやアプリのデザイン刷新、そしてバナー広告からYouTubeなどのメディア・名刺・封筒といったツール類まで、あらゆるクリエイティブへの反映を行いました。
短期間で全面的なリブランディングをやり切ったことですでに成果も生まれています。ダイレクト広告の成果は昨年比で4倍以上になり、デザインパートナーとのコミュニケーションコスト削減、RENOSY初となる大規模認知施策を成功に導く、など多方面で良い影響が生まれています。
経験上、こういった大規模なリブランディングでは以下のような課題が発生しがちではないでしょうか。
コンセンサス形成の課題
意思決定の難易度が高く、合意の形成が難しい。いつまでも決まらない。
プロジェクト推進の課題
範囲が広いのでプロジェクトのスコープが決めづらく、浸透がさせづらい。ブランド定義書を作って終わりになり、実装後の定着化が難しい。
成果確認の課題
リブランディングが結果に繋がったかどうかが分かりづらい
今回は、我々RENOSYのコミュニケーションデザインチームが、実施の意思決定も難しいサービス全体のリブランディングプロジェクトを小規模な体制でどうやってスピーディーに進めて成果に繋げたか、その流れをまとめたいと思います。
今回のブランドリニューアルの背景には
事業が成長し、広い顧客に届くメジャーなブランドへ変革する必要性
ブランド認知の面で、旧ブランドでは一貫性が弱い
という2つの課題がありました。
RENOSYは既存のお客さまからの満足度がとても高く、高いリピート率や紹介率が強みになっています。一方で、さらに多くのお客さまに愛される状態にしていくためには、もっとブランドをパワフルにしていく必要性を感じていました。
また、新たに打ち立てられた「AI不動産投資」というサービスとしての新たな価値に対してデザイン面のアップデートが追いついておらず、ここについても改善が必要でした。
このような問題に加えて、リブランディングを行いやすいタイミングが重なっていたこともプロジェクトを始める後押しになりました。
このプロジェクトの直前ではRENOSYのサービスコンセプト/ミッション/ビジョンの再定義が行われており、この新しいコンセプトに沿ってブランド/クリエイティブも同時に見直す議論を行うのは自然な流れでした。
また、2026年1月に実施された都内主要駅のOOHジャックや、全国CMも意思決定に影響しています。
とはいえ、どこまでリブランディングのスコープを広げるのかは慎重に検討しました。また、合意形成のスピード感についても議論の分かれるところでした。当初は「一年くらいかけて、社内の意見を調査しながら進めるべき」という意見もありました。
一方で私たちは、スピード感を出すためにも、CCOの篠原と徹底的に議論しながら少人数体制でコア部分を策定していく方法を取りました。
RENOSYのクリエイティブチームは、Creative Centerという組織に所属しており、その組織を管掌しているのがCCOの篠原です。電通出身で、KDDI株式会社 au「三太郎」などのCMディレクションの経歴を持ち、クリエイティブ・オブ・ザ・イヤーの受賞経験もある経験豊富な篠原のリーダーシップのもとに、少しづつプロジェクトを進めていきました。
RENOSYの旧ブランドでは、「高級&モダン」をデザインコンセプトとして「くすみがかったオレンジと紺」の配色がメインカラーでした。当初はこの「オレンジ」をより鮮やかにする、というミニマルな刷新も検討されていました。
しかし、ブランドコンセプト策定時に調査されたユーザーインサイトからは、RENOSYは「不動産投資というマイナーな存在を、メジャーで安心感のあるものに変えていく」という新たなポジションを期待されており、であればデザインコンセプトやカラーも大規模にリニューアルすべきという視点がもたらされていました。
旧ブランドは、「高級&モダン」をデザインコンセプトに設計されたものです。
しかし、よりメジャーになるために根本的に何を変えるべきか検討していったところ「高級&モダンだと、逆にニッチに見える」という結論に至り、「新しいデザインコンセプト」と、「ブランドカラー」を探ることになりました。
リニューアルの的を「ブランドカラー」に絞ったのは、2026年の冒頭からRENOSY史上最大規模の認知施策が行われることが決まっており、それを見据えてのことでした。
旧トンマナの「オレンジ&紺」はブランドカラーの認知を目的にした配色ではく、ユーザーも社内も「RENOSYとはどんなブランド?」と聞かれると、曖昧な回答しか返ってこない状態でした。
まず戦略として “メジャーな認知” を取る。楽天といえば「赤」、LINEといえば「緑」といったように、カラーから「メジャー感醸成」をしていくことを狙って、ブランドカラーの検証に進んでいきました。
ブランドカラーの策定過程では、RENOSYのブランドパーソナリティや、先に決められたサービスコンセプト/ミッション/ビジョンをもとにブランドの根本となる要素を分解しつつ、膨大な検証を行っていきます。
それと同時に、これからのブランドの軸となる「デザインコンセプト」も検証を重ねていきました。
まず「RENOSYが何よりも大切にするべき価値観とはなにか?」を検証していく中で見えてきたのが、既存ユーザーからの「RENOSYの “先進的なテック企業としての側面” を応援している」という声でした。
RENOSYは「旧態依然とした不動産業界を、テクノロジーの力で刷新し、情報の非対称性を透明化していく」という理念のもとに生まれたサービスです。その点をユーザーから強く支持していただいていることに気づきます。
合わせて、RENOSYは「不動産投資」のサービスを扱っているので
地に足のついた
泥臭く地道な
お客様へ寄り添う姿勢
という側面も重要でした。「不動産投資」というものに、ネガティブなイメージがまとわりつく業界を変えたいという想いも強くありました。
上記のユーザーの声や、我々の大切にしている「とことん寄り添う」という価値観を包括してデザインコンセプトを議論した結果、「信頼と先進」というデザインコンセプトが策定されました。
その後、「信頼と先進」というデザインコンセプトを体現できるカラーとは?といった視点で、リブランディングチームでは「信頼の度合い」や「先進の度合い」を目安に膨大なカラーを細かく検証を進めました。
メジャー感、信頼感、先進性のバランスを踏まえて、鮮やかで爽やかな突き抜けた「ブルー」が、これからの新しいRENOSYに相応しいのではという意思決定となりました。
これを「RENOSY BLUE」と命名し、これからのブランド認知の軸としていくこととします。
上記の方針をリブランディングチームで策定した後に、「ブランド戦略会議」にて代表樋口の承認を得て正式に採択されました。
リブランディングの議論開始からはここまで一月半程度と、圧倒的なスピードで意思決定が行われています。
RENOSY BLUEへのカラー変更が決まった上で、どこまでカラーを展開していくのかについても議論しました。
RENOSYはかなり大規模なプロダクト群となっており、全てカラーを変えるとなるとアプリやサービスサイトだけでも1500ページ以上の変更が必要となります。そのため、はじめは「1年かけてゆっくりと変えていく」という案も出ていました。
ここで篠原と議論し、「ブランド変更はやるからには短期間で全部変えないといけない」「まずはtoCでユーザーに触れる『表紙』の部分だけでも変えた方がいい」という方針が決まりました。一気にコミュニケーションを仕掛け「RENOSY=ブルー」というポジションを強く取っていくことが必要だという考えのもとでの意思決定です。
このブランドカラーの変更は、2026年の1月から大規模な認知施策を控えているという絶好のタイミングでした。ここでやらなければ、次にいつ着手できるのかは分かりません。このタイミングで必ずやるべきだと腹を括りました。
通常だとさまざまな関係部署にお伺いを立てる進め方になりやすいと思いますが、私たちはCCOがクリエイティブの最終決定権を持つ迅速な意思決定体制が確立されており、代表の樋口と篠原からGOがでたことで1500ページ以上のカラー変更・すべての広告クリエイティブの変更を進めることは提案後すぐに意思決定されました。
ここからRENOSY BLUEへと一気にカラー変更をかけていきます。とはいえ範囲が広いので、どこから改善するのかはチームで緻密に議論を進めました。結論としては「ユーザーがブランドに触れる順序」に沿って優先度を決めました。
「お客さまに見えているところ、本で言うと表紙の部分だけでも良いから、ガラッと変える」という前提に立ちつつ、まずはユーザーが一番目にするサービスサイトを切り替え、次に派生プロダクトである売却プロダクトを切り替え、最後に既存のお客さま向けの管理用アプリを切り替えるという流れで1500ページの該当範囲を順次切り替えていくこととしました。
また、プロダクトサイドだけではなく、グループ企業やサービスロゴ、パンフレット、名刺、営業資料から社内PPTのフォーマット、ノベルティにいたるまで、最終的にはありとあらゆる媒体を徹底的にリニューアルしていくこととなりました。
サービスサイトと一口に言っても膨大な数があるので、具体的にお客さまが多く訪れているページなのかをすべて数値で整理した上で、改善の順序を細かくフェーズ分けしています。
着手にあたっては、更新前提の簡易的なブランドガイドラインをつくり、これに沿って一つひとつ改定をかけていきました。
私たちはこれはあくまでカラーを反映したミニマムなガイドラインという前提にしていて、より「RENOSYらしさ」を強く伝えるために改善するものと捉えていました。
これをプロダクトデザイナーにも連携して、このタイミングでデザインシステムやこれまで媒体ごとに個別に作られていた ユニークなコンポーネントも更新してもらい、大量の色変え・デザインアセットの共通化を行っています。
ブランドカラーの適用だけではなく、「先進性」を各クリエイティブで伝えるための "REONSYらしさの定義" も同時並行で行います。カラー変更プロジェクトの裏側でブランドガイドラインを充実させていき、後から合流させていきました。
ブランドガイドラインには具体的なクリエイティブの共通認識が湧くように、写真やイラストなどのよく扱う制作物ごとの理想像をまとめようとしていました。ただ、作成当初はまだ "RENOSYらしさ" の定義が曖昧だったので、商品でもある投資用の建物の写真を使う場面があったものの、どのような建物の表現にすればRENOSYらしい指針になるのか分からず、具体的な部分が決めづらい問題がありました。
そこで、まずは視覚的に各クリエイティブの共通認識を揃えるためにムードボードを制作することを提案しました。
RENOSYらしさとは何かを考えるためにここで改めて「信頼と先進」などの言葉や定義を分解してデザインコンセプトを精緻化します。各コンセプトからキーワードを抽出したうえで、さらにそれぞれどのくらいの割合で感じてもらうかといった定義を固めます。
これまでのデザインが「信頼」を伝えるものだったのに対し、本リブランディングでは「AI不動産投資」という新たな価値を打ち出すため、「先進性」を強く打ち出す必要がありました。
しかし「先進性のあるデザイン」のイメージが曖昧だったため、他社クリエイティブを参考に、デザイン面から感じる「先進度」で5段階に分けて整理しました。以下のようなイメージです。
レベル5... 流線形・グラデーション・3D表現
レベル4... 大胆なレイアウトのグラフィック / タイポグラフィ
レベル3... 明るい背景・クリアなブランドカラー
レベル2... クリーン・標準感・信頼感
レベル1... 手書き感・テクスチャ感
このレベル分けやキーワードを並べてみた上で篠原がレビューを行い、「レベル3から4の間くらいが良いのでは」という話になりました。レベル4だと人の温かみがなく、レベル3だと先進性が薄くなるので、その間くらいに見えるような青色の配置をしようという意図です。
このレベルに沿って、写真やイラスト・動画といった今後扱う頻度が高い各クリエイティブのムードボードをつくりました。新規でムードボード用に作成したイメージと世の中のデザインサンプルを組み合わせて、レベル3〜4の間の中でもさらに細分化して青色の見え方や扱い方を調整しています。
例えば写真などは、RENOSYでは建物や人物の写真を使うことが多いのですが、これも非常に多くのパターンが想定されます。
その中でも「RENOSYらしい建物の表現とは何か」とパターンを分けていき、コントラストの高低やドラマチックさなどを調整してトーンを決定しました。人物においても「スーツすぎると従来の不動産と差別化しづらい」「家族写真もわざとらしすぎると不自然」とNGパターンを考え、最適なパターンを定義しました。
各クリエイティブでこのような検討を行い、最終的にこのように頻度の高いクリエイティブを網羅したムードボードが完成しました。
これらのムードボードを反映して、ブランドガイドラインを完成させました。
これをつくった一番の目的は「RENOSYらしさといえばこういうイメージだよね」という会話をしやすくするためのコミュニケーションツールにしていくことです。私たちは内部のデザイナーも多い一方で、外部のデザインパートナーに依頼することも多いので、あらゆる人がつくるべきクリエイティブに共通認識を持てるようにする必要がありました。
そのためにブランドガイドラインの内容も具体的・かつ視覚的にまとめるようにしています。例えばRENOSY BLUEの説明では、彩度が高いため色の組み合わせによってはハレーションを起こしやすいことから、他の彩度の高い色との併用を避けるための注意点を細かく加えています。
ただカラーやタイポの定義だけでは最終イメージが湧きづらいので、ブランドガイドラインはムードボードと合わせて使うものとして共有しています。
他にも、同じ目的で写真表現についてもNGパターンとしてわかりやすくまとめてメンバー間・デザインパートナーとの意思疎通を行いやすくしています。
これらのブランドガイドラインができた後に、先行してカラー反映を進めていたサービスサイトやアプリの中のイラストレーションも後追いで変更していきました。また、バナーや動画などのダイレクト広告もすべて変更しています。
他にも、YouTubeの「リノシーチャンネル」のロゴも新たに制作し、サムネイルも新規で投稿される動画についてはすべて変更。デザインテンプレートやYouTubeデザインガイドラインも外注用に整備しています。Instagramのアイコンや投稿画像のトンマナも新たに定義して反映しました。
デザインパートナーとのコミュニケーションでも、クリエイティブを依頼するタイミングでブランドガイドライン・ムードボード・デザインキーワードをセットでお渡しする運用へと変更しています。
もちろん先方の経験やレベル感にもよるのですが、経験を積んでいる方だとこれらを渡すだけで意図通りのものがあがってきていてディレクションのコストが下がっています。
こうしてRENOSY全体のブランドリニューアルプロジェクトを完了しました。
短期間のプロジェクトでしたが、変更したサービスサイトやアプリのページ数は1500、広告やYouTubeなどあらゆるタッチポイントのクリエイティブを改定し、今後の制作においても指針となるブランドガイドラインやムードボード、各種デザインテンプレートがアウトプットされています。
このプロジェクトによる数値的な成果も生まれています。例えばダイレクト広告は昨年比で4倍以上の効果が出ており、即効性のある指標向上ができました。また、各種デザインパートナーとのコミュニケーションコストが下がったことで制作量も増加、クリエイティブあたりにかかる工数も削減できています。
さらにマイルストーンとしていた大規模広告戦略も2026年1月に無事リリースすることができました。
ブランドリニューアルを含む全体の認知施策を通して、過去にない大きな成果が生まれています。
最後に、このような大規模なブランドリニューアルプロジェクトを進めた学びとして、事業会社で内製でサービス全体のリブランディングを進めるポイントを残しておきます。
まず必要性のつくり方について。ブランドリニューアルは影響範囲も大きく成果も見えづらいので、そもそも実施の意思決定が難しいプロジェクトです。私たちの場合、以下のポイントを押さえられたことでうまく進められました。
サービスコンセプト、ユーザーインサイト、経営とのすり合わせで一貫性をつくる
大規模広告というマイルストーンから必要性を強める
いざブランドリニューアルをするとなっても、どこまでをスコープとするのかも迷うところです。RENOSYでは「ユーザーに見える範囲をすべて変える」と意思決定しましたが、ここも環境的な要因がありました。
- 経験豊富なCCOの存在、ブランドへの知見の深さ
- CCOを中心としたデザインチームにクリエイティブを一任している経営の存在
そして、最速で結果につなげるためには以下のポイントも重要でした。
スピードとシャープさを重視した少数体制
意義から伝え全社を巻き込むコミュニケーション
短い期間でもやり抜く胆力
改めてGA technologiesという会社がブランド・クリエイティブに本気で投資していく意思があることを感じるプロジェクトでした。私たちがこのように進められたのは環境的な幸運さもあると思いますが、同じような課題に取り組む方のヒントになればとても嬉しいです。
リブランディングの成果が生まれるのはこれからが本番です。「不動産投資」自体をもっとメジャーで当たり前なものにするために、ここからもRENOSYのクリエイティブを進化させていきます。
