こんにちは!SmartHRコミュニケーションデザイングループ(通称:コムデ)のmikityです。2021年9月、コムデに1人目のディレクターとして入社し、制作物のディレクションはもちろん、制作物ができるまでのフローや体制、組織づくりなど、制作環境の整備・強化に取り組んできました。チームとしては、2022年の1月にディレクションユニットという新しいユニットが設立。立ち上げに関わっています。
入社後、ディレクターとして様々な案件に関わっていく中で、「制作物の依頼が多くて大変...」といった制作側の悩みも、「どんな風に制作依頼をすればいいか分かりづらい」などの依頼側の悩みも、ともに経験してきました。
ディレクションユニットでは、そうしたものづくりにかかわる悩みを、根っこから改善していく活動をしています。
事業が成長するごとに、求められる制作物の幅や量は増えていきます。
依頼内容も多岐に渡り、例えば、イベントバナーやアイキャッチ、資料やZoomの背景など(少し前の数字になりますが)おおよそ月に70件以上の依頼が来ている状況です。
https://cocoda.design/sahalog/p/pfdc8d46b7e2b
また、一案件の規模も大きくなり、関わる人も増えてきました。そのため、これまでやってきた「制作担当のデザイナー・アートディレクターが、ディレクターも兼任する」といったことも難しくなってきました。
例えば、“働く”の未来を考えるオンラインフェス「WORK and FES」では、サイト制作からノベルティ、イラスト、会場空間の設計まで、幅広く手がけており、制作もディレクションも非常に難易度が高いものでした。
私が入社した当時、コムデは、慢性的な人手不足や工数不足を解消しつつ、根本的に制作環境やフローを改善するための課題特定にも取り組もうと考えていました。
そこで1人目ディレクターとして採用されたのですが、その際に伝えられていた課題感は以下のようなものでした。実際のオファーレターから抜粋しますね。
オファーレターからも分かるように、個々のデザインクオリティには信頼をいただけているものの、会社の急成長に合わせたデザイン組織としての役割を果たしきれているかというとまだまだ改善の余地があり、課題が山積み、という状態。
私自身も、制作ディレクターとしてだけではない、組織のディレクションまでを期待されている点に面白みを感じました。コムデであれば、「コミュニケーションをデザインする」という観点を持って、もっと大きい取り組みができるのではないか。そんな魅力を感じ、入社を決めました。
さて、そんな経緯で採用されたものの、当初はマネージャー直下の一人ディレクターとして活動することになりました。それまでのコムデでは、制作を進めるデザイナー・アートディレクターがディレクターの役割も担っている状況でした。
つまり役割分担が明確ではなく、個々人のポテンシャルや努力でなんとかカバーしている状態。とはいえ、そのような状況の中で、いきなり「ディレクターとしてやってきました!今の状態はよくないので、改善しましょう!」といったことをすると、意図しない反発や対立を生んでしまいます。スムーズに、そして関わるメンバーも気持ちよく改善していけるように、2つの方針を立てました。
- まずは実績づくりを通して「ディレクター」の役割を知ってもらう
- その上で、制作環境や組織の課題など、ボトルネックの特定や解消に動く
まずはディレクター専属のメンバーがいることで、より成果物の品質や制作プロセスのスムーズさが良くなることを実感してもらうステップです。
実績をつくっていくことで信頼を生み、役割を理解してもらうために各所で実績づくりを進めていきました。
幸運なことに、すぐに2人目、3人目のディレクターとして実力ある方を採用できたので、メンバーの力を借りつつ、様々な施策で実績を作っていくことができました。
その中からいくつかの事例をご紹介しますね。
マーケメンバーと行った“働く”の未来を考えるオンラインフェスWORK and FESでは、主にウェブサイト制作の面でディレクターに活躍してもらいました。
ディレクターはsakikoさんに入ってもらい、プロジェクトマネジメントで手腕を発揮。スムーズな制作進行をしていただき、マーケメンバーからも嬉しい声をいただきました。
2022年8月には、広報チームと協働し「Gifts for Social Goods」という企画をリリースしました。
労働にまつわる社会課題を解決しようとしているSmartHRですが、事業範囲だけでは解決しきれない問題を、お祝いごとの機会をうまく活用することで、よりミッション達成に近づくための取り組みです。
こちらは2022年5月入社のmzk1496さんが担当。入社してすぐの担当施策だったにもかかわらず、要件定義から実際の制作進行までを担っていただきました。
広報メンバーからも以下のような嬉しい声をいただき、ディレクターの存在価値を少しずつ全社に実感してもらえるようになってきました。
そうしたメンバーの活躍を通じ、現場の具体的な声を拾い集めることができてきた2022年後半からは、少しずつ制作環境やデザイン組織が抱える、根本的な課題に向き合うようになってきました。
ここで当初の方針の2つ目「制作環境や組織の課題など、ボトルネックの特定や解消」に関する取り組みにやっと着手することができます。手始めとして要件レベルの手戻りを防ぐために制作物の依頼チャンネルの改善を行いました。
ちなみに、依頼チャンネルは2021年ごろから制作物の依頼をする際に使われているSlackのワークフローで、背景はこちらに詳しくまとめられています。
このプロジェクトは先程のmzk1496さんが担当。ディレクションユニットが担った理由としては、日々様々な案件に携わり、肌感があったということと、要件整理というディレクターのスキルを活かすことで、まずはどんな種類の依頼があるのかをアートディレクターのtajimaruさんと一緒に整理していきました。
整理する中で、現状の依頼チャンネルには、以下のような改善箇所があることが見えてきました。
依頼のカテゴリの数に対して、ワークフローの種類が足りなくなっていた
最初にヒアリングしたい要件を回収しきれず、都度ミーティングしなければならなかった(手戻りが発生していた)
依頼側も「依頼時、最初に伝えればいいか」が分かりづらかった
つまり、社員数、部門数が急増し、制作ニーズや依頼ジャンルが多様化していくことでコミュニケーションコストが増大していたことがわかりました。議論の結果、コミュニケーションコスト圧縮を中心目標にアップデートをすることに決定し、方針を固めていきました。
依頼フローはコミュニケーションコストの圧縮を中心に改善を進めることを決め、コーポレートエンジニアに開発を依頼。ディレクションユニットとしては初めてのコーポレートエンジニアとの連携でしたが、とても助けられました。
我々が持っていった相談に対し、「言われたことを作る」のではなく、最適解を提案してもらえたのが大きな理由です。やりたいことに対し様々なプランを出してくれ、本質的な「あるべき姿」に向けて伴走してくれました。
コーポレートエンジニアとの連携は順調で、いよいよリリース、というタイミングでは、全社会議で依頼チャンネルのメンテナンスについてアナウンスをしました。ほぼ半日、依頼受付をストップするという大掛かりなアップデート告知です。
こうして無事にリリースされた新しい依頼フローは、依頼ジャンルに対応したワークフローが追加整備され、制作の初動を切りやすくなっています。
さらに根本的な課題に取り組むために、現場のディレクションに入っていきながら、「コムデの忙しさはどこから来ているのか?」「根本的に改善すべきところはどこか?」を突き止める取り組みも進めました。
拡大しているコムデには、制作だけではなく契約やディレクション、採用や育成など「制作以外のコムデに必要なこと」があり、コムデ的デザインOpsとも呼べる活動を行っていく必要があるからです。
まずは、様々な方に協力いただきながら、以下のような形でコムデを取り巻く課題の可視化をしていきました。
これ以外にも、制作依頼の件数であったり、中長期的なスパンでの制作計画をヒアリングし、可視化していく中で、コムデ以外の部署に対しても「コムデがすごく忙しい」という状態から「毎月100件以上の依頼がある」といった具体的なコミュニケーションがとれるようになりました。
そうすることで、「なんとなく忙しそう…」という感覚値の共有だけではなく、「この時期はこのくらいの制作ボリュームで依頼が増えるから、リソースの調整をさせてほしい」という具体的な相談がしやすくなっていきました。
また、可視化したことで、コムデ内でもさらに詳細なリソースの可視化や今後の体制整備の必要性が出てきました。そこで、一時的に制作をストップしてそれらの整備に時間を充てた時期もありました。
その一例が「momu_PJ」です。momuとは「揉む」を指し、様々な依頼をいったんプロジェクトメンバーですべて受け、優先度や重要度をリサーチしながら割り振りを決めていく、といった活動を行いました。この活動を通じて、どんな粒度のどんな依頼が発生しうるのかをリサーチし、今後の改善の方針に役立てることができました。
冒頭で、「ディレクションユニット立ち上げまでの方針」として、以下の2つを立てていました。
まずは「ディレクター」の役割を知ってもらう
その上で、制作環境や組織の課題など、ボトルネックの特定や解消に動く
この仮説は実際にうまくいき、また、実行する中でいくつか大事な気づきを得ることができました。
以下の3つの気づきは、(組織や制作フローなどの)改善を担うディレクターとして、チームで気をつけていることです。
何かを改善する時「今のやり方を否定している」ように見えやすいので、丁寧にコミュニケーションをとる
「なんでこれをやっていないの?」と感じることは、あえてやってない可能性も十分あることを考慮する
改善のための情報を待つのではなく、集めた情報を元に「自分なりの仮説」を先出すると、情報は自然に集まってくる
特に、事業会社のような、サービスの改善や体制・フローの改善が地続きで継続的に行われている場合、これまでの活動に対する接し方はとても大事だと思っています。何ごとも過去に取り組んできた人の仮説や考えがあり、経緯がある。そこを無視して身勝手に進めることは、当時なりのベストを尽くして対処してきたメンバーに向けた敬意に欠けることです。
もちろんすべての解決策がベストであれば素晴らしいことではありますが、予算や期間の都合でベストが取れず、ベターな改善策で一歩でも前に進もうとしてきた人達がいる。今までの改善も、今後予定している改善も、このような前提を踏まえてこそ成り立つと考えて、ディレクションユニット全体で気をつけています。
さて、2022年から約1年間半の活動を通じ、ディレクションを専門とするユニットができたことで、コムデが「制作だけをするチーム」ではないというのが、コムデ内にも、コムデ外にも伝わってきたように思います。
また、ディレクターが、案件のディレクションだけではなく、制作フローや配置・予算などの「組織のディレクション」に取り組めていることも、この1年半の活動の成果です。
今後は、デザイン組織や制作環境の根本に関わるような取り組み、「コムデなりのデザインOps」のような活動を行っていく予定です。
インハウスでのデザインディレクション、プロジェクトマネジメントは、まだまだ未定義な部分も多く、手探りなところも多いですが、コムデやディレクションユニットが切り拓いていけるといいなと思っています。また新しいお知らせを持ってこれるよう、メンバー全員が一丸となって取り組んでまいります!