2024年10月に、みずほ銀行のデザイン組織であるUX/UIチームの成り立ちや大切にする考え、組織構成やメンバー、実績などをまとめた「カルチャーデック」を作成しました。
カルチャーデックを公開した背景には、みずほ銀行 UX/UIチームにおけるカルチャーを構築し、浸透させていくという文脈があります。
前提として、カルチャーの浸透には明確な正解がなく、組織の個性に合わせてあるべき姿を模索し続ける必要があると考えています。
今回は、みずほ銀行 UX/UIチームにおけるカルチャー浸透の取り組みについて、その全体像と現在地をまとめたいと思います。
はじめに、私たちがカルチャー浸透に力を入れ始めた経緯をお伝えします。
UX/UIチームは、2021年に立ち上げを開始し、「みずほ全体に、デザインが浸透している状態」を目指して活動を進めてきました。
これまでに、みずほダイレクトアプリやみずほ銀行ウェブサイトのリニューアル、新規サービスにおけるロゴデザインなど、さまざまなプロジェクトを手がけ、実績を積み重ねてきました。
現在、チームは約10名体制へと拡大し、みずほ銀行全体のユーザー体験を向上させるための取り組みをさらに広げるとともに、組織のさらなる成長を目指しています。
カルチャー浸透に取り組み始めたきっかけは、チームの実態を示すものは点在しており、まとまっていなかったことです。
チーム内でも認識にばらつきがあったり、採用活動や他部署とのコミュニケーションの場面で、私たちの実態を的確に伝えづらい状況でした。
今後、組織を拡大し、行内全体へと活動範囲を広げていくためには、改めて「私たちは何者なのか」を明確にし、適切な期待を持ってもらえる状態をつくることが必要だと考えました。
チームの実態を示すものは点在しており、まとまっていなかった
また、みずほ銀行という大企業のデザイン組織として、その活動は決して綺麗なものばかりではなく、泥臭い部分も多くあります。
だからこそ、そういった面も含めてUX/UIチームらしい軸を形成し、チーム全体で一貫した活動ができるようにしたいと考えました。
前提として、カルチャー浸透は定量化や指標化が難しく、評価が曖昧になりがちです。
さらに、組織ごとに個性があるため、他社の成功事例をそのまま当てはめることも難しく、それぞれの組織に合わせた形にアジャストしていく必要があると考えています。
そこで、UX/UIチームとしてのカルチャーの指針づくりはトップダウンで素早く行い、運用はボトムアップで進めることで、チームの実態に即した形に調整しながら浸透を図ることにしました。
はじめにマネージャー層を中心とした少人数でカルチャーの言語化を行い、それらをわかりやすく整理した資料として「カルチャーデック」を制作していきました。
メンバー全員でワークショップなどを通じてじっくりと固めていくアプローチも想定されましたが、まずは軸となる概念を迅速に定めたうえで、その解釈をチーム内で共有し、認識をそろえていくほうが適していると判断したためです。
マネージャー層を中心に議論を重ね、チームのカルチャーやバリューの言語化を進めていきました。その過程では、2021年の組織立ち上げに至るまでの経緯を振り返り、私たちがどんな未来を目指しているのかを丁寧に棚卸ししていきました。
こうして言語化された私たちのミッションは『お金の「見えづらい」をデザインで形作る』。さらに、バリューとして『共感を生み出す』『仲間に巻き込む』『逆境を楽しむ』『探求し続ける』という4つの言葉に落とし込みました。
言語化したカルチャーを看板として掲げられる媒体として、カルチャーデックの制作を進めました。
閲覧する相手の立場や理解度を考慮しながら、みずほ銀行のUX/UIデザインチームに対する認識がスムーズに深まるよう、情報設計にも工夫を加えています。
例えば、冒頭ではミッションを明示し、その後にチーム概要やアウトプット例を紹介することで、実態や雰囲気を理解しやすい構成に。一方で、バリューは主に社内メンバーに向けた内容であることを踏まえ、後半に掲載するなどの調整を行いました。
次に、デザインコンセプトをワークショップを通して定め、カルチャーデックのビジュアライズを進めていきました。
具体的には、UX/UIチームとして目指したい姿や人格のイメージをキーワードとして発散し、抽象化しながら方向性を整理しています。
さらに、その内容を基にデザインコンセプトを定めていきました。
次に、デザインコンセプトから連想されるビジュアルパターンを5案ほど可視化しました。チーム内では、「デザインコンセプトとの関連性が十分に表現されているか」「バリューの表現方法として適切か」といった観点で検討を行い、案を絞り込みながらブラッシュアップを進めていきました。
こうしたプロセスを経て、みずほ銀行 UX/UIチームのカルチャーデックを作成しました。
カルチャーを可視化したあとは、デザインチーム内で共有しながらボトムアップで調整を重ねていくプロセスを大切にしています。
ミッションやバリューは、単に言語化されただけではすぐに腹落ちするものではなく、日々の行動に自然と反映されるまでには時間がかかります。
また、メンバー視点では、「バリューに基づいた行動が何につながるのか」が見えづらい状態では、継続的な実践にも結びつきにくくなってしまいます。そこで、みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、そしてUX/UIチームがそれぞれ掲げるスローガン・コンセプト・ミッションの関係性を構造化し、チーム内で共有しています。
さらに、定常業務の中でもバリューと向き合えるように、振り返りや定期的な読み合わせなどの運用施策を取り入れ、チームや個人のあり方をアップデートし続けられる環境づくりにも取り組んでいます。
プロジェクトの完了時や長期的なプロジェクトの節目ごとに、チーム内でバリューに基づいた振り返りを実施することで、個人の成長だけでなく、チーム全体としても、みずほ銀行のサービスやプロダクトをより良いものへとアップデートできるよう模索を続けています。
チーム内の週次の相談会でカルチャーデックの読み合わせを実施し、バリューに紐づくアクションの共有や個々の理解を深める場を設け、その内容に基づいてバリューの再定義を行っています。
カルチャーの浸透は、明確なゴールのある取り組みではないと考えていますが、現時点(※2025年4月)ではこれまでに取り組んできた「カルチャーの言語化」「カルチャーデックの制作」「ボトムアップで調整を重ねる仕組みづくり」などが進捗として挙げられます。
ここで改めて、カルチャー浸透に向けた現在地を整理するために、現状・課題・理想・ネクストアクションの4つの観点からまとめましたので、以下にご紹介します。
ここまで、みずほ銀行UX/UIチームにおけるカルチャー浸透の取り組みについてまとめました。
チームの実態を示すものが点在し、十分に整理されていなかった状態から、存在意義や行動指針をカルチャーとして明確化し、それをチームに根付かせていくための試行錯誤を重ねてきました。現在のカルチャーや浸透の仕組みは、まだ完成形ではなく、今後もチームの成長とともに進化し続けていくものだと考えています。
また、私たちの活動は、綺麗な部分ばかりではなく、試行錯誤を繰り返しながら、地道に積み上げていく泥臭い部分も多くあります。だからこそ、その実態も含めて、社内外で「みずほ銀行 UX/UIチームは、こんな存在である」と実直にお伝えしていきたいと思っています。
私たちが目指す姿と実態を深く理解したうえで、それでも一緒にチャレンジしたいという方、あるいは社内での協力者を増やし、より成果に繋げていけるように取り組みを続けていきたいと思います。